2005年春闘 働くみんなの要求アンケート 報告
第3回集計(最終)の特徴点について
2005年2月23日・日本医労連調査政策局

1、集計結果の概要

(1) 2月23日現在、46,013名分を集約し、集計しました。
(2) 「生活実感」については、「苦しい」が68.2%と、7割近くを占めました。「生活実感からの不足額」については、5万円以上が49.1%と約半数を占め、その平均は41,407円となりました。医療・福祉労働者の生活実態の厳しさを物語るものです。
(3) 「2005年春闘での賃上げ要求額」については、3万円以上が45.6%、2万円以上で60.4%、1万円以上で86.1%などとなっています。この結果、平均は27,941円となっており、強い賃上げ要求が示されました。
(4) 「疲労感」については、「疲れる」が93.6%にも達しており、医療・福祉職場の深刻な過密労働の実態を示すものです。「労働条件改善要求」では、「増員」が最も多く、51.2%を占めました。現場実態を反映し、特に看護職で増員要求が強くなっています。
(5) 「不払い時間外労働」については、「ない」が36.9%に止まりました。不払い時間外労働が横行し、改善が進んでいないと言うことができます。
(6) 「政府要求」については、「消費税減税や課税最低額の引き上げなど税負担の軽減」が最も多く、51.6%を占めました。続いて、「年金改悪の阻止と最低保障年金制度の確立」48.4%、「医療・介護・福祉・保育などの充実」48.4%が特に高い割合になっています。


2、集約状況と回答者の属性について

(1) 2月23日現在、日本医労連に46,013名分(昨年最終41,208名分。以下も特に断りのない限り、カッコ内は昨年最終)のご報告をいただきました。これをもとに、第3回集計をおこないました。
 この第3回集計をもって、日本医労連としての集計作業は打ち切ります。例年通り、今後は配布枚数・集約数のみの集約とします。
(2) 回答者の属性については、年齢では、「20代」が最も多く29.2%(昨年最終30.4%)を占め、以下、「30代」26.5%(27.0%)、「40代」23.6%(24.6%)、「50代」16.8%(16.0%)などとなっています。39歳以下で58.3%(57.7%)と、6割近くを占めています。
(3) 職種では、「看護職」が56.3%(58.1%)と6割近くを占め、続いて「医療技術職」14.8%(14.8%)、「事務職」12.4%(11.9%)、「介護職」7.8%(7.2%)、「技能・労務職」6.4%(5.8%)などとなっています。
(4) また、「女」82.0%(82.2%)、「正職員」88.6%(89.9%)、「組合に加入している」87.5%(88.8%)などとなっています。


3、生活実感について  設問1(1)

(1) 「やや苦しい」が最も多く、45.2%(43.6%)を占め、続いて、「まあまあ」が28.9%(28.4%)、「かなり苦しい」が23.0%(24.6%)などとなっています。
(2) 「かなり苦しい」と「やや苦しい」をあわせた「苦しい」が68.2%(68.3%)と、7割近くを占めています。反対に、「かなりゆとりがある」「ややゆとりがある」をあわせた「ゆとりがある」は2.5%(2.8%)しかありません。医療・福祉労働者の生活実態の厳しさを物語る結果です。


4、年間収入について  設問1(2)

(1) 「減った」が50.8%(61.1%)と、過半数を占めましたが、昨年からは10.3ポイント減りました。逆に、「変わらない」は26.1%(18.7%)に増え、「増えた」も11.2%(9.1%)と微増になっています。
(2) 依然として賃下げ傾向が続いていますが、増え続けていた「減った」が減ったことは、重要な変化です。人勧での俸給表そのものの引き下げを押し止めたこと、一時金の大幅削減傾向に歯止めを掛けつつあり、2004年末一時金では月数で前年以上3割、前年同4割、前年以下3割となったことなどの反映と言えます。


5、生活実感からの不足額について  設問1(3)

(1) 最も多かったのが「5万円」の32.8%(32.0%)で、次いで「3万円」22.3%(21.9%)となっています。「3〜5万円」に61.1%(59.8%)と、6割が集中しています。
(2) 5万円以上が49.1%(49.3%)と、約半数を占めています。この結果、「生活実感からの不足額」の平均は、41,407円(41,836円)となりました。昨年からは429円の微減ですが、平均が4万円を超えていることは、医療・福祉労働者の生活の厳しさを物語るものです。
(3) 「生活実感からの不足額」の各組合の平均額については、かなりばらけています。最も多かったのが「3.6万円以上3.8万円未満」の13.9%で、続いて「3.4万円以上3.6万円未満」と「4.4万円以上4.6万円未満」の13.1%、「4.2万円以上4.4万円未満」10.7%などとなっています。また、59.6%の組合が4万円を超えています。


6、春闘での賃上げ要求額について  設問1(4)

(1) 「1万円」が最も多く、25.7%(24.5%)を占めました。続いて、「3万円」20.1%(21.0%)、「5万円」15.5%(15.5%)、「2万円」14.8%(15.2%)などとなっています。
(2) この結果、3万円以上が45.6%、2万円以上で60.4%、1万円以上で86.1%などとなります。「春闘での賃上げ要求額」の平均は、27,941円(28,630円)となり、昨年から689円下がっていますが、平均で約2万8千円であり、強い賃上げ要求が示されたと言えます。
(3) 「春闘での賃上げ要求額」の各組合の平均額については、最も多かったのが「2.6万円以上2.8万円未満」の16.4%で、続いて「2.8万円以上3.0万円未満」13.1%、「2.2万円以上2.4万円未満」12.3%、「2.4万円以上2.6万円未満」11.5%などとなっています。


7、不払い時間外労働について  設問2(1)

(1) 「ない」が36.9%(38.5%)に止まり、かえって悪化した結果となりました。日本医労連として不払い時間外労働一掃のとりくみを強化してきたこともあり、組合員の意識が高まった影響もあると見られますが、いずれにしても、不払い時間外労働が横行し、改善が進んでいないと言うことができます。
(2) 4年前(2001年)との比較では、「ない」は4.4ポイント増え、「5時間未満」が6.4ポイント減っています。しかし、5時間以上については、0.6ポイント増えています。不払い時間外労働が多いところ(超勤が多く忙しい施設)では、全く改善がすすんでいないと言わざるを得ません。


8、疲労感について  設問2(2)

(1) 「とても疲れる」がさらに微増し、50.4%(50.0%)を占めました。「やや疲れる」も43.2%(43.2%)となっています。「とても疲れる」と「やや疲れる」をあわせた「疲れる」は93.6%(93.2%)にも達しています。医療・福祉現場の深刻な過密労働の実態を示すものです。
(2) 反対に、「あまり疲れない」は4.0%(4.0%)、「まったく疲れない」は0.3%(0.3%)しかありません。それをあわせた「疲れない」はわずか4.3%(4.3%)に過ぎません。


9、政府要求について  設問3(3つ選択)

(1) 「消費税減税や課税最低額の引き上げなど税負担の軽減」が最も多く、51.6%を占めました。続いて、「年金改悪の阻止と最低保障年金制度の確立」48.4%、「医療・介護・福祉・保育などの充実」48.4%などとなっています。この3つが他を引き離し、5割前後の高い割合となりました。
(2) 続いて、「最低賃金の引き上げと全国一律最賃制の確立」25.6%、「憲法改悪阻止、自衛隊派兵中止、核廃絶の取組強化」20.3%、「リストラや解雇規制などの雇用安定策」19.1%などとなっています。
(3) 本設問は全労連の統一項目であり、選択肢が若干変更され、各選択肢の表現も少し変わっており、昨年とは単純比較はできません。しかし、昨年からの変化としては、国会状況等を反映して第1位が年金から消費税へ変わったことと、失業・リストラ問題の割合が若干減り、他に分散したことなどが指摘できます。


10、労働条件改善要求について  設問4(3つ選択)

(1) 「増員」が最も多く5割を超え、51.2%(50.7%)を占めました。職場がいっそう忙しくなり、増員要求が切実であることを示すものです。
(2) 続いて、「諸手当の改善」40.7%(42.1%)、「休日・休暇の拡大」31.9%(31.0%)、「完全週休2日制」29.5%(31.6%)、「退職金の増額」26.2%(26.6%)などとなっています。ほぼ昨年と同様の傾向と言えます。
(3) なお、「完全週休2日制」については、昨年から3.1ポイント下がり、3割を切りましたが、この選択肢については、完全週休2日制を実現しているか否かで大きな違いがあります。昨年からさらに低下したのは、完全週休2日制を実現している組合からの集約が若干増えたことが主な要因と見られます。


11、職場の不安について  設問5

(1) 「賃金の抑制」が最も多く、22.8%(27.0%)を占めました。続いて、「自分の健康」18.9%(15.9%)、「医療事故、医療・看護の質の低下」16.0%(16.0%)、「病院経営の悪化、統廃合」13.3%(13.7%)、「『合理化』の進行、労働条件の悪化」12.0%(11.6%)などとなっています。
(2) 「賃金の抑制」が依然として最も大きな不安となっていますが、4.2ポイント減り、反対に「自分の健康」が3.0ポイント増えたのが、特徴となっています。賃金抑制に歯止めを掛けつつあり、職場の過密労働がいっそうひどくなっていることの反映と思われます。


12、参考資料・個人データによる比較検討の結果について

(1)個人データによる比較検討のねらいについて
(1) 「個人データによる比較検討」とは、アンケートの各個人のデータをお寄せいただき、クロス集計したものです。年代や職種等の属性による違い、特徴を分析することを目的にしています。寄せられた個人データは13,036名分(4,056名分)であり、昨年の3倍以上です。
(2) 結果については後述の通り、年代ごとの違いが大きく出たことと、看護職の過密労働の実態が顕著に表れたことの2点が、大きな特徴となっています。

(2)賃金関係の設問について
(1) 「生活実感」については、年代別では、教育費等の出費がかさむ40代が最も苦しくなっています。
 職種別では、低賃金構造にある技能・労務職と介護職が苦しくなっています。
(2) 「年間収入」については、「減った」が、年代が上がるほど増えています。中高年層の賃金抑制が厳しいことの反映です。
 職種別では、介護職で「減った」の割合が低いことが目立ちます。パート等が多いため、一時金削減等の影響が少なかったものと思われます。
(3) 「2005年春闘の賃上げ要求額」の平均は、20代以下、30代が2万6千円台に対して、40代、50代以上が2万8千円台となっています。年代の低い層では「生活実感」の苦しさも弱くなっていますが、「最低賃金額の引き上げ」が年代の低い層で高いことに表れているように、単純に見ることはできません。要求額が低いのは、元々の賃金が低いことも影響しています。
 職種別では、技能・労務職が最も高く、続いて看護職が高くなっています。逆に低いのは事務職です。事務職については、経営的な観点からの考慮も働いているものと思われます。
(4) 「生活実感からの不足額」についても、同じような傾向となっています。

(3)賃金関係以外の設問について
(1) 「不払い時間外労働」については、看護職で「ない」が非常に低いことが目立ちます。看護職が仕事に追いまくられ、特に過酷な労働を強いられているということです。
 年代別では、年代の低い層ほど「ない」が少ないのが特徴です。年代の低い層で看護職の割合が高いこととともに、青年が過密労働の最前線にあるということを示しています。
(2) 「疲労感」についても同様に、看護職で「とても疲れる」が特に高い割合になっているのが目立ちます。
 年代別では、年代の低い層ほど「かなり疲れる」が高くなっていますが、各年代に占める看護職の割合が大きく影響していると見られます。性別で、男が「とても疲れる」の割合が低いのも、同様の理由と思われます。
(3) 「政府に対する要求」では、年代による特徴が非常によく出ています。「消費税減税や課税最低額の引き上げなど税負担の軽減」と「最低賃金の引き上げと全国一律最賃制の確立」は年代の低い層で割合が高く、反対に「年金改悪の阻止と最低保障年金制度の確立」と「憲法改悪阻止、自衛隊派兵の中止、核廃絶の取り組み強化」は、年代の高い層ほど割合が高くなっています。
(4) 「労働条件改善要求」については、年代別の違いがいっそう顕著です。年代の低い層ほど割合が高いのは、「増員」「諸手当の改善」「休日・休暇の拡大」「職場環境の改善」「リフレッシュ休暇の制度化」です。逆に、年代が高い層ほど割合が高いのは、「退職金の増額」「60歳以上の雇用確保」「福利厚生の充実」「夜勤制限」です。
 この結果、20代以下では「増員」56.3%、「諸手当の改善」48.3%、「休日・休暇の拡大」42.4%「完全週休2日制の実施」26.6%、「職場環境の改善」24.1%に対して、50代以上では「退職金の増額」45.4%、「増員」41.4%、「諸手当の改善」31.3%、「完全週休2日制の実施」29.4%、「60歳以上の雇用の確保」22.0%と、大きな違いが見られます。
 職種別では、「増員」が看護職で61.5%と、非常に高率になっています。超過密労働に置かれた看護職の増員要求の強さを示すものです。「退職金の増額」が、技能・労務職で特に高いのは、年齢構成の高さの反映です。
(5) 「職場の不安」については、「賃金の抑制」と「医療事故、医療・看護の質の低下」が、年代が低い層ほど高くなっています。50代以上では「自分の健康」が特に高くなっています。
 職種別でも、かなり違いが見られます。「医療事故、医療・看護の質の低下」は、看護職で特に高く、医療技術職が続いています。逆に「雇用不安」は、技能・労務職と事務職、介護職、事務職で高い割合になりました。「自分の健康」は、介護職が特に高くなっています。
 「雇用不安」については、正職員で4.9%に止まったのに対して、パート等は29.4%と、非常に大きな違いが出ました。

以 上