index
労働組合の積極的取り組みで労安法等「改正法」活用を
看護師と8時間労働が現場から「消える?」



労働組合の積極的取り組みで労安法等「改正法」活用を

 10月26日、参議院本会議において、労働安全衛生法等「改正案」(労働安全衛生法、時短促進法、労災保険法、労働保険料徴収法の4法案)の審議が行われ、可決・成立しました。この法案は、前通常国会において審議途中で、衆議院解散に伴い廃案となったものですが、特別国会で充分な審議も経ずに、共産党のみの反対で成立したものです。
 この「改正法」には多くの問題点があります。長時間・過密労働などにより過労死・過労自殺が多発するなかで、厚労省も「過重労働による健康障害防止のための通達(2002年)」を出し、事業者は「月45時間を超える時間外労働をさせた場合は、労働者の健康管理について産業医等による助言指導」「1か月100時間、2か月から6か月間で1か月平均80時間を超えて時間外労働を行わせた場合は、当該労働者に産業医等の面接指導を受けさせること」としていました。しかし、今回の労働安全衛生法の「改正」では、「産業医の面接指導」を法案に盛り込みましたが、その要件として「時間外労働100時間」とし、さらに「本人の申し出」を省令として定めるとして、これまでの通達の内容を後退させてしまったのです。また「総実労働時間年間1800時間」を国際公約とした「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(時短促進法)」を廃止して、労働時間の設定を「労使の自主性」にまかせるなどを内容とする「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」にしたことです。さらには、JR西日本事故等の続発する重大災害を予防する法「改正」とはなっておらず、「労災保険料のメリット制の拡大」も逆に事業主の安全配慮義務をゆがめ、労災隠しを助長する内容となっています。
 この様に今回の「改正」は、重大な問題点を含んでいますが、同時に「改正法」の内容や「付帯決議」を労働組合が積極的に活用すれば、職場の労働条件改善に役立つものも含まれています。
 「労働時間管理」の点では、付帯決議で「労働時間に着目した健康確保対策の実行に万全を期するとともに、賃金不払残業への厳正な対応や時間外限度基準の遵守の徹底に取り組むこと。また、始業・終業時刻の把握等労働時間管理の徹底を指導するなど、重点的な監督指導を行うこと」としています。また「労働安全衛生法」の関係では、前述の様な問題がありますが、法律上「面接指導制」が明記されましたので、「労安法は最低基準」である点からも、労働組合が積極的に「通達」に示されていた「時間外労働45時間」を基準に「面接指導制」を導入させる必要があります。さらに「過重労働、メンタルヘルス」に関しては、「過重労働対策・メンタルヘルス対策を(安全)衛生委員会等の調査審議事項に追加することなど」を求めており、労働時間等の調査審議を行った場合は、同委員会を「労働時間等設定改善委員会」とみなすとしています。労災保険も単身赴任や複数勤務時の通勤災害としての保障の改善もあり、労働組合の積極的な取り組みで、労働条件改善等に使える部分は、積極的に活用していく必要があります。

indexに戻る


看護師と8時間労働が現場から「消える?」

 看護職の職場定着対策は、失敗している。
 今春闘でも現れたが、どこでも看護師確保対策の困難に直面している。高度医療機関であれ、急性期中心の病院であれ、一般・精神病院であれ、来春の採用予定数の目途がたたないと人事担当者が語っていることに示される。
 昨年就職した同じ病棟に配属された同期の仲間は、5人のうち2人が退職し、今年入った4人の後輩、1人やめ1人は病気になって療養中。例年200人前後の新卒が採用されるそうだが、来年はまだ3分の1ぐらいで、だから、年末に辞めたくても辞めさせてもらえないと先輩が困っていると、大学病院の看護師も言う。
 一方で、看護師の欠員から3交替を見直す「2交替勤務が研究」され、職場の「合意」で“試行”実施されることが増えている。2人夜勤から3人、4人夜勤となってきたが、欠員で夜勤可能人員数が減り、夜間の看護体制を維持する窮余の策。看護師も、勤務間隔にゆとりがあるので体が休まると好評と…。
 改めて計算してみる。入院日数は減った、夜勤人員は増えた(当然ではあるが)、従って看護師の採用数は増えた。しかし、入院病床が大幅に増えたわけでもなく、夜勤回数が驚くほど減ったわけでもない、外来患者が爆発的に増えたわけでもないのに、毎年数百人規模で新卒を採用する病院でも看護師が足りない、数百人規模の退職があるからか…。
 入院日数が短縮され、看護のキャリアが必要であるにもかかわらず、急性期病院・病棟から看護師が消えようとしているのではないか。その速度があがっている?
 看護師の労働時間は、この数年の間に大幅に増えている。昨年の退勤時間調査によっても、今秋の看護現場実態調査でも労働時間が増えた、業務が過密になっていると応えている。夏休みは上司が勤務表に組み込むが、年休は組み込まれない。始業前30〜60分前の“情報収集”という業務が賃金の対象外で、概ね2〜3時間の残業が当たり前で、このうち幾らを残業手当として請求するか悩む実態がある。
 病を治して職場・社会復帰へ、人間らしい生活へと仕事をする看護師の仕事は、まったく人間らしい生活をしていない。始終業時刻は就業規則上のことで、不払い残業が常態化し、1日12時間もはたらく勤務が繰り返される職場では数年しか働けない。
 今回の調査は看護職場が、慢性疲労で不健康な人が辞めたいと考えながら仕事をし、医療事故の原因は忙しさと応え、8時間労働が名目だけとなりつつあることを示した。これは健康ではたらき続けたいと願う普通の人々にとって重大な問題である。
 看護師はなぜ辞めるのだろうか。そして、何処に消えたのだろうか。看護師が病棟から消えている実態を掘り下げ、その重大性を共有することが重要になっている。
 今回の看護職員労働実態調査はこのことを雄弁に物語っている。職場と地域で、この深刻な実態を語り合うことが求められている。

indexに戻る