第53回定期大会近づく
医療・社会保障・平和の情勢と今後の課題
 日本医労連第53回定期大会が、まもなく開催されます。激動する情勢の中で、今大会の課題と今後の方針の重点について、前川昌人・日本医労連書記長に聞きました。

政府と財界の思惑をしっかりと捉える

 現在の情勢の特徴について、「規制緩和」をキーワードに考えると、第1に医療・社会保障分野は「自由な競争」が不充分だとして、営利資本参入の整備が進行しているといえます。本人3割負担、混合診療、政府管掌保険の再編、保険給付範囲の縮小などの公的保険制度の縮小と、国立・公立・公的病院の統廃合による医療提供体制の縮小、医師・看護師の派遣解禁など重大な事態が進行しています。
 第2は「働き方」です。労基法改悪の「解雇自由化」を食い止め「解雇規制」を盛り込む成果をあげましたが、3年有期雇用や裁量労働制、更には労働者派遣法など、重大な改悪が行なわれています。「地方独立行政法人法」もその一環ですが、労働者の権利破壊が悪法といっしょにすすめられています。
 第3は、「有事法制」です。戦争する国に踏み出しました。これらの3つは、この国のあり方に関わる重要な問題です。財界が1月に発表した2025年度を目標とした「活力と魅力溢れる日本をめざして」(略称・奥田ビジョン)の「(1)社会保障制度の全面的な解体と消費税の引き上げ、(2)21世紀の企業収益を確保する規制改革法の制定、(3)企業が自由に貿易・投資活動ができる通商政策の展開、(4)政治との関係強化」を想起すれば、こうした動きとも符合します。

「構造改革」の破錠、劇的な変化の可能性も

 しかし、「構造改革なくして景気回復なし」と掲げて3年目に入った小泉政権は、デフレ経済を促進させ、その破綻は明瞭です。これまで自民党を支持してきた保守層からも「小泉政治ノー」の声が強まっています。医療費負担増の凍結を求めて「小泉内閣退陣」を突きつけた医師会は2ケタ、外形標準課税や消費税引き上げに反対する中小企業・業界団体、一方的な市町村合併の見直しを求める全国市町村長会、イラク戦争・有事法制に反対する世論と国民的な運動の裾野はかつてなく広がっています。
 年内解散・総選挙が必至といわれる中、悪政転換、いのちとくらし、平和をまもるたたかいを大きく広げることが求められます。

いのち守るたたかいの先頭に立って

 我々のたたかいでは、何と言っても「負担増凍結」における教訓です。結果として法案審議に至らなかったものの、一旦決まった制度を「凍結」「元に戻せ」との世論と運動をつくることに貢献しました。このたたかいは、今後の国民的な運動の様々な分野の先駆けとなるでしょう。すべての組合員が結集して中央(国会)と地方・地域を結んだたたかいとして成功させること、このことの重要性を明確にしたと思います。

今年度のたたかい 3つの重点課題で

 第1は、医療事故をなくし、安心の医療とゆきとどいた看護を実現することです。このことが医療労働者の第1の役割であることから、医療提供体制の縮小や、医療の「合理化」「営利化」、福祉切り捨てなどに反対する運動を広げること、そのための広範な戦線づくりに奮闘することです。この点で、「もうガマンできない、看護師は訴える、看護師ふやせ」のメッセージを発信する運動をすすめるなど、増員闘争を位置づけ、新たな決意でたたかうことです。
 第2は、すべての分野にわたる深刻な状態悪化を改善するために、労働組合としての社会的な役割を果たすことです。失業率は5%台で高止まりし、労働者の賃金水準も十数年前に逆戻りし、あたり前の権利や社会保障が後退させられています。これまでは考えられなかった「合理化」が強行され、労働者の無権利状態が広範につくりだされています。民間・公務含めて「権利擁護」のたたかいを基調にすえ、全労連・国民春闘共闘とともに“状態悪化”を改善する職場と地域から国民総行動型の運動をまきおこすことです。
 とりわけ、国立病院賃金職員7、500人の首切りを断じて許さない、このために産別の総力をあげてたたかうことが重要です。
 第3に、力強くおおきな産別組織をつくることです。「“いのち削る”こんな日本でいいはずがない」との対話を、点と線、面で旺盛にすすめることが重要です。職場と地域から世論をつくり、産別全体の統一闘争と団結で、医療にはたらく人々はじめすべての働くなかま、医療を受ける人々、地域のことを真剣に考えている人々と共同するたたかいに成功するなら、おおきな前進を切り開く確かな希望を持つことが出来るでしょう。今大会では、こうした点での積極的な討議を期待したいと思います。