11.29 職場改善交流集会を開催
国の責任で医療事故解決する機関設立を

安全・安心の医療確立は、患者・国民の切実な願い  署名の取り組み強めよう

 日本医労連は11月29日「安全安心の医療実現に向けた職場改善交流集会」を東京三省堂ホールで開催。看護師・医療労働者など約100人が参加しました。

 「安全・安心署名」に早急に取り組もう
 主催者挨拶で日本医労連田中委員長は、看護職の医療事故報道が続く中「再発防止よりも処罰を優先する日本の風潮は問題」と指摘、「私達の運動もあり政府は第三者機関設置など医療安全対策に乗り出したが抜本対策には至らない。一方で過労死を招く過酷な現場の実態があり、四師会も診療報酬引下げは安全対策上の大問題と反対する。早急に職場から『安全安心署名』に取組もう」と訴えました。

 安全・安心の医療は患者国民の切実な要求
 西川書記長は「安全・安心の医療は患者国民の切実な要求。医療労働者が専門職としての自覚に立ち運動に努力している。また今年1月の集会では(1)医療事故の問題点と到達点を組織全体の共通認識にし課題を明確にする、(2)患者国民が安全な医療を受ける権利を守り事故をなくし医療の安全を確立する運動を強化する、(3)職場での事故防止の取組を強化する、(4)対自治体・政府要求と運動の方向性を確認する‐を目的に、安全を確保し業務を遂行できる人員体制であるかが提起された。引き続く本集会の目的も1月集会での重点要求を職場実践で検証し、実践の積み上げを交流する事にある」と今集会の位置付けを強調しました。
 その上でこの間の運動の到達について「(1)組織的制度的対応、(2)人員配置の抜本的改善、(3)診療報酬抜本改定等財政保障の必要性を共通認識としたこと。今後も政府へ、医療の安全コストの公的負担や事故防止第三者機関の設置を求め、安全安心の医療確立にむけ、『患者家族・職場・対政府』統一要求を軸に、国民に開かれたわかりやすい医療提供の立場から『情報開示』のシステム化をめざそう」と問題提起しました。

 国をあげ医療事故 解決する機関設立を
 次に『医療事故防止実態調査報告』で井上中執は特徴を(1)体制整備は図られたが実際の対策は非常に不十分、(2)調査から人手不足による過密勤務は明白、大幅増員の必要性を証明(3)財政や人員問題で特に対策が遅れる民間中小病院への支援措置が重要と指摘。調査結果ではインシデント事例は大半が報告する体制(81・1%)だが活用は不十分(52・3%)、安全考慮した人員増では変化なし・欠員補充なしが86・3%占める」としました。
 結論では(1)回答は急性期大病院中心で全国的には更に厳しい状況、(2)国の対策は事故情報提供や第三者機関の調査分析が主で、医療事故の根本的解決には権限を持ち全体改善する機関を国を挙げ設立すべき、(3)職場改善の取組みは未だ不十分。労働組合の本格的対応が必要としました。

チェック機能生かし、事故防止へ労働組合も自主的取り組みを

メッセージに託された看護師の悲鳴
 討論では国共病組の中島さんが「看護メッセージ」運動を紹介し「日勤で20時過ぎ、準夜が午前3時、深夜が昼に終わるサービス残業が日常化し、日勤深夜など間隔が8時間も無い勤務に心身共に疲れ果て、多くの看護師が患者に行届いた看護ができず心を痛め自責の念に駆られている」。常に医療事故と隣合せの緊張で「自らの健康や過労死さえ心配する声も、これが看護師確保法から10年目の現実。まさにもう我慢ができない状況」と訴えました。

人工呼吸器鳴らず国立で死亡事例も
 全医労津島さんは「今年国立病院で警報が鳴らず死亡事故に至る事例が発生、厚労省に原因究明を申入れた。国立は筋ジストロフィー等難病の長期入院患者が多く人工呼吸器使用台数が多いにも拘らず、看護師配置が非常に少ない。厚労省の『事故防止対策』も具体化に程遠く、『警報基準』すら行き渡らない状況」と報告。また実際のトラブルでは回路が外れても警報が鳴らない事例が13%あり。警報が聞こえない例では気密性の高い最近の病室の問題が指摘されました。

事故対策は組織横断的な取組みに
 また横浜市大病院従組小芝さんは4年前の医療事故での今回の高裁判決を「医療関係者の責任に踏み込んだ厳しい内容と真摯に受け止めざるを得ない」と述べ「一貫した運動の中、高裁は病院の管理体制の不備にも言及した」と指摘。「院内『安全管理基本指針』では個人任せではなく組織横断的に取組む事が明記され、インシデント報告も処罰や人事に用いず、『事故初期対応マニュアル』も整備。患者同意のもと医療事故も公表基準に沿い公表した。こうした指針や一定の体制整備の中、今度は大学内別施設で医療事故が発生、事故防止対策がいかに重い課題か、個人責任追及とは違う医療関係者自ら専門職として自覚をどう高めるかが課題」と訴えました。

事故防止対策に労組が問題提起
 全日赤山口の出合さんは、インシデント報告に関し「院内安全管理委では対策が不十分。報告内容が個人の能力査定に直接響き、些細なミスも報告するのが本来の役割だが、それにより評価されると知れば誰も報告をあげず結果的にミスの隠蔽に繋がる。一部の看護師の問題から全員が考える材料とするには非公開の点は問題。事故の捉え方の問題を含め組合ニュースで特集する等、病院の事故防止対策をチェックする立場で、労組から問題提起したい」としました。

客観的事実明確に再発防止対策を
 全日赤大津の玉木さんは医療事故に関し「患者家族への謝罪など初期対応に続き、病棟看護師長として事故当事者のサポートと勤務配慮を行う中、事故事例検討を通じ客観的事実の明確化に努め、個人批判をせず多忙な現場で事故を再発させない対策を全員で検討した」「こうした中でマニュアルが実践可能か、ICUに専任医師がいない、輸血実施時のダブルチェックがない事が判明し具体的改善を行う。新聞報道され記者会見で原因の徹底究明と組織的対応が強調される中、労働組合は、専任医師の配置、3・3夜勤体制の増員等を病院側に要求し闘った」と発言しました。

航空界の常識いまだ医療界は
 航空労組連の村中さんは「航空業界も速度ミスや部品の交換ミス等一見単純な間違を複数で見落す例がある。航空業務は全てマニュアル化され、再発防止の国内国際基準が明確で国境のない産業の為、事故が起きると世界各社に改修手順書が回る。医療現場では機器操作も会社毎に違う等我々には考え難い。また事故や死亡では操縦士の個人責任追及に終始した時代が永く続いたが、この間労働組合が正しい原因究明と適切な再発防止策を社会に訴え運動し操縦士の責任追及主義は改善された。国の報告書にない改善勧告、対策防止提言をメディアに訴え、事故に遭われた乗客家族を労組が見舞う等の運動で国も科学的に認めざるを得ない状況だ。患者も労働者も守る政策闘争を共に広げよう」と訴えました。

医療の安全は国民要求
 患者の権利オンブズマン東京の大山正夫さんは「私たちの活動は患者の苦情を医療者との話し合いにより解決をめざすもの。医療者と患者の関係は急速に変化し、今年の『個人情報保護法』ではカルテは患者のもの、情報は全て公開する法律に変わった。オンブズマンへの相談は病院側の正確な説明を聞きたいという場合が非常に多く、患者家族への最初の対応が極めて大事。労働組合は病院の対応をチェックし自主的に取り組む事が求められる。世論は“医療に対しては安全が大事”と言う共通要求がある。これは皆さんの運動の成果です。」と述べました。