賃金体系改悪を許すな−1
機能評価を理由とした職能給導入は問題

 最近、病院の人事考課や目標管理のあり方をめぐって、(財)日本医療機能評価機構(坪井栄孝理事長)による病院機能評価の受審を理由に、病院経営者が人事管理制度を一方的に変更したり、職能給・成果主義賃金制度を導入しようとする動きが強まっています。
 3月9日から3日間、医療機能評価を受審した東京の財団法人井之頭病院では、病院機能評価の受審を理由にした「職能給的視点を取り入れた給与体系」の検討が始まっています。同病院では、この間、組合活動を理由にした賞与の減額措置や組合費のチェック・オフの一方的中止など、経営者による組合敵視の不当労働行為が繰り返されており、今度は、病院機能評価の受審を理由にした一方的な労働条件の変更問題が懸念されています。
 受審後の3月12日に行われた病院管理職会で、事務部長は「年齢・年功のみの給与体系で臨まざるを得なかったが、『職能給的な要素をどこで加味しているか』を強く指摘された」「平成19年度を目途に給与体系を変えていく予定であることを説明した」「平成16年夏季賞与からは加算を中心にした査定を導入していくことも説明した」「サーベイヤーからは『空手形ではOKは出せない』とのことだったので、管理職への昨年冬の賞与査定の基準・結果などを示した」「講評でも『早期に第一歩を踏み出し、最終的には完全なものを目指すべき』との強力な取り組みを要請された」などと述べ、「病院機能評価を受審する以上は『職能給的視点を取り入れた給与体系』が必須条件と受け止めた」と報告しています。
 事務部長の報告が事実とすれば、労使対等の立場で労働条件を決定すべき井之頭病院の経営者の姿勢だけでなく、学術的・中立的な組織と運営が行われるべき日本医療機能評価機構が、病院機能評価という事業活動を通じて、医療経営者に特定の人事考課制度の導入や賃金・労働条件の変更を求めたり、労使関係に介入することは、憲法や労働組合法、労働基準法にも抵触しかねない、重大な問題をはらんでいます。
 同機構は、2002年8月、労働福祉事業団関東労災病院への予備審査段階で、労使交渉や労働組合活動への介入と受け取れる報告書を作成していたことが明らかになり、この件で、日本医労連と全労災に「医療機能評価は、特定の立場に偏することのない中立的な立場で行われる必要がある」「機構の評価手法が労使関係に介入する意図をもったものでない」(同機構・大道久評価委員会委員長)との回答をよせ、評価調査者(サーベイヤー)に対して、改めて評価項目の趣旨・基準の徹底を指示した経過があります。
 日本医労連では、今回の井之頭病院の事例をはじめ、いくつかの一般病院、民医連・医療生協病院などで、医療機能評価の受審を理由に、経営者が人事考課制度や賃金・労働条件の変更を提案していることをつかんでおり、今後、同機構に事実確認を求める要請を行うとともに、医療機能評価の評価項目や基準、評価調査者による評価内容や助言が適切であるかどうか、検証に入ることにしています。