岩手・福岡で地域医療実態調査
労災病院の使命今なお

 日本医労連は、厚生労働省の「労災病院の再編成計画」で廃止対象とされた大牟田、筑豊、岩手労災病院の廃止計画が、一酸化炭素中毒、じん肺、振動障害などの患者の治療と地域医療に与える影響を検証するため、6月に福岡と岩手に地域医療実態調査団を編成しました。調査では、諸団体を訪問し、廃止計画の受け止めや地域の医療・福祉の実態、労災病院の役割、労災病院の存続について意見を交換しました。

6.4 大集会に350人  筑豊大牟田

 九州大学大学院経済学研究院・遠藤雄二助教授を団長とする「筑豊・大牟田労災病院の再編に関する地域医療実態調査団」は、6月3日に大牟田地区、4日に筑豊地区の調査を行いました。
 3日は、14人の調査団が大牟田労災病院と大牟田市役所を訪問し、意見交換を行ったほか、「大牟田労災病院廃止反対連略会議」の患者、家族、職員ら40人から要望を聞きました。家族や患者からは、「夫は、40年間も車椅子生活をしている。ここがなくなったら行くところがない」「COだけでなく、一般患者のリハビリなど診療を充実すべき」など、廃止計画への怒りと病院存続を求める声が出されました。
 翌4日は、20人の調査団が筑豊労災病院と2市8町、医師会、商工会など20団体を訪問しました。訪問先からは、「患者を医療面だけでなく、生活者としての側面も理解してほしい。旧産炭地であり、じん肺に苦しむ人たちにとって無くてはならない病院だ」「県立病院の廃止問題も浮上しており、労災病院までなくなると困る。どうにか存続してほしい」など、ほとんどから存続を求める声が出されました。
 また午後6時からは、穂波町公民館ホールで地域住民や自治体首長、筑豊じん肺訴訟原告など約350人が参加し、「労災病院の存続・充実を!6・4大集会」が開かれ、「筑豊労災病院を存続・充実し、地域医療を守る会」(藤島文雄会長)が設立されました。「守る会」では、廃止計画の撤回を求めるアピールを採択するとともに、厚生労働省や労働者健康福祉機構への陳情、署名活動などを行うことを確認し、「住民パワーで権力に対抗していく」(藤島会長)と支援と強力を呼びかけました。

18ヶ所29団体を訪問  岩手

 岩手大学人文社会科学部・井上博夫教授を団長とする「岩手労災病院の再編に関する地域医療実態調査団」は、6月8日、花巻地域の調査を行いました。
 花巻市長や住民組織が、厚生労働省による労災病院の再編成計画をうけて、「労災病院としての存続」から「地域医療機関としての存続」にむけた動きを強めています。そのもとで、地域医療の実態と岩手労災病院が担っている役割を明らかにし、労災病院の存続と地域医療の確保の方策を検討するため行ったものです。調査活動には、41人が参加しました。
 花巻市・生涯学園都市会館で結団式を行った後、花巻市、花巻地区消防事務組合、温泉組合、観光協会など18ヶ所、29団体を訪問し面談を行いました。
 訪問先では、「花巻厚生・北上県立病院の統合問題と、岩手労災病院の廃止問題で、住民はダブルパンチを受けている」「署名活動などしたが、労災病院については話が決まっていると言われる。専門性をいかした病院がなくなるのは困る。不安だ」「労災病院は初期の使命を忘れないでほしい。今なお、労災病院を必要としている労働被災者がいる。ぜひ存続を希望する」「地域経済への影響が大きい。病院の職員の雇用や、地域の業者など影響がある」など夫々の立場からの意見と要望が寄せられました。また、花巻市議会・岩手労災病院対策委員会の各会派の代表と、2時間におよぶ懇談を行い、今後、病院存続にむけて情報交換と連携を行うことになりました。
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 日本医労連では、2つの調査団の調査結果と病院存続にむけた提言をまとめ、厚生労働省などに要請することにしています。