病院給食 「私たちの手で」
委託提案撤回させる 出雲市民病院労組

 「病院給食は、私たちにまかせろ」、出雲市民病院労働組合(有田周二委員長)の栄養課の仲間は、病院給食の業務委託提案を撤回させ、直営による充実をめざしている。来春スタートする、出雲市民リハビリ病院の病院給食を委託するとの提案があったのは昨年3月。「黒字にするため」が提案の理由であった。

委託はさせない
 県下や市内でも委託の波が寄せている。リハ病院での委託を認めれば、出雲市民病院に波及してくることは必至。「そなんことはさせない」との栄養士、調理師達の強い思いがあった。
 受託予定業者の「説明会」と「試食会」が企画されたが、「委託はさせない」との意志を固めて参加した。「この委託費で毎年の昇級ができるのか」「貴社の栄養士は患者に栄養指導ができるか」などと質問。委託による「質」の低下についても徹底して追求した。賃金の昇級に関しては、「慣れた人はよそ(他)へ行ってもらう」との業者の返答。みんなあきれた。「試食」もしたが、「こんなもの、食べておれん」というのが実感であった。
 今は、選択メニューを週4回、昼と夕食の両方行っている。手作り料理がモットー。ベッドサイド訪問で、嗜好やアレルギーの状況を聞いている。

1軒1軒歩く
 執行委員会では、「職場が直営でやる」と言うなら、最後まで支援しよう、となった。内部桂二さん(調理師、労組副委員長)は早速、院外の理事を1軒1軒回り、資料を渡しながら直営の良さと委託の問題点を話した。経営側の「総会」で結論は出なかったが、代議員の方々からも「直営でやるべき」との声が上がった。他の職員にも知ってもらおうと病院3階のみんなが使う会議室に「壁新聞」で栄養科の思いや改善への仕事ぶりを紹介した。

消えたメリット
 労使の経営協議会では、直営と委託の経費のの差が年間約一千万円あると説明された。内部さんは、「収支の試算を正確にしてくれ」と主張した。賃金も初任給ではなく、現在の平均賃金で試算されていた。2〜3度検討したら、直営でも委託でも「あまり違わない」ということになってきた。6月になって、その差が320万円となった。栄養課では、業務システムの改善にも取り組んだ。早番はいつも1時間早く出てきていたが、今年4月からは業務を細分化して見直し、勤務体制も変更した。
 6月29日、直営でも委託でもコスト的には大きな差はないとして、経営側より「直営で準備する」との回答を得た。

“平等感”ある職場
 内部さんは「栄養課長や事務部門の幹部とも日頃から気軽に話をし、隔たりはない。栄養士もみんな調理師資格を取って調理の現場に入っていっしょに仕事をする。職場には“平等感”がある」という。「今後の目標は?」聞くと、「開院までに、新人の研修をしっかりやらねば」と眠そうな目を擦った。