11.19 要求前進にむけ
対政府交渉
 日本医労連は、11月19日、厚労省、総務省、文科省、農水省、財務省、人事院、および独立行政法人国立病院機構への、「対政府交渉・団体要請行動」を行ないました。交渉の概要を掲載します。

厚労省交渉
(診療報酬、医療・年金、介護・福祉)
介護保険改悪での患者負担増を追及
 冒頭、交渉団は中越地震被災地の医療確保と医療費減免措置実施を強く要請。交渉では、(1)混合診療導入問題‐「積極的推進の立場は取らない」(厚労省)(2)来年の介護保険利用料の自己負担増‐「一律負担増は、在宅の負担が増加し施設負担との均衡が崩れるので実施しない」(同省)(3)軽度介護認定者サービスの保険外し‐「予防給付を全面に打ち出しただけ。今のサービスは止めない」(同)など、職場地域での運動による世論を反映した回答がされました。
 一方、(4)ホテルコスト(住居費、食事代)徴収による負担増では‐「特養個室で約6万円増、低所得者は4人部屋で負担据え置き」「在宅利用者はすでに負担」(同省)との回答に、交渉団は「金の有無でサービス選択の余地が大幅に狭められる」と反論しました。
 (5)介護施設での“医療行為”問題では‐「違法であり医療事故原因とも認識。特養での緊急・夜間時の看護体制の必要性を論議中」(同省)。また、(6)診療報酬改善では在院日数削減で重度化した実態が職場から報告され、人員増となる報酬改善を強く要請しました。

厚労省交渉
(看護、増員、安全対策)
需給見通し策定後に基本指針見直したい
 交渉では、(1)看護職員の大幅増員と人員配置基準引き上げ‐「需給見通し策定にあたっての基本の考え方・素案を県に通知した。次の検討会で算定基準を検討」。「看護師確保法の基本指針は、需給見通し策定後に見直しを、罰則規定も、次回見直しで議論したい」と答弁。“配置基準”では「地域偏在」を理由に見直し困難との答弁に、現場の過酷な実態を指摘し、「1対1」「1.5対1」の配置基準の実現のための努力を促しました。
 (2)事故防止対策では‐来春からの個人情報保護法に伴うカルテ開示や、重大事故に伴う通知など対策の現状が答弁され、交渉団は増員と「安全のコスト」対策の遅れを指摘し具体化を求めました。(3)2年課程通信制では‐「来年開校予定の10校を、12月指定に向け調査中。学校は漸次確保されると確信」の答弁に、各県1校の養成所設置と受講生の支援策、カリキュラムの弾力化などでの国の施策の強化を求めました。

厚労省交渉
(労働基準・最低賃金・派遣・労働安全)
不払い時間外問題「全産業的に重要」
 要請に対しては、(1)医療における最賃制度‐「労基法適用者が対象。看護師の3分の1以上の申請があれば、労働局で資格を精査し、最賃審議会で審査。独法国立病院も対象」(同省)。
 また(2)派遣労働者問題‐「今春実施したばかり、派遣の“撤回”は今後見極めていきたい」(同省)には、「見極めはどう行うのか、医療労働に派遣はなじまず、チーム医療がはかれない」と追及しました。
 (3)時間外労働の不払い問題では‐「全産業で重要な問題。11月は賃金未払いなくす月間。4通知の周知徹底・指導を実施中」(同省)とし、時間外協定の医師の特別条項では「あくまでも臨時的なもので、常態化はダメである」と回答しました。(4)日本医労連の「退勤調査」についても「重要な情報と受け止めている」(同省)、(5)タイムレコーダー設置では「客観的に行っていないなら指導する」とし、(6)時間外労働の実態がある場合「能力が無いなどは超勤手当てを支払わない理由にならない」と回答しました。
 (7)宿日直問題では‐「各監督署ごとに調査票を配布・回収、本省でまとめてはいない。調査票の回答がない企業は対処している。実態と違うなら監督署に申告してほしい」と述べました。

厚労省交渉
(医療提供体制・公的医療)
医療供給体制確保と公的医療機関充実を
 交渉では、(1)国民の求める医療提供体制の確立について‐「地域医療の確保で都道府県へ助言中。介護は各自治体の計画で推進し、地域の支援にむけた交付金獲得をめざす。救急体制は医療施設への補助など、今後も取り組む。特に小児救急は重点」(同省)、(2)医師不足の解消では‐「地域の偏在化もあり来年度中に見直したい」(同省)の回答に、交渉団は「医師不足による診療科閉鎖で搬送途中に患者が亡くなる」と訴え、省側は「北海道、東北等へ補助のやり方を検討したい。僻地・離島の医師不足対策にむけ今秋検討会を立ち上げる」と回答しました。
 (3)公的医療機関の削減計画中止では‐「公的病院の設置目的、高度先進医療、へき地医療ヘの対応が必要」(同省)とし、(4)労災病院‐「効率・効果的に配置」、(5)社会保険病院‐「保険財源に頼らない運営で、経営実績みて2年後に計画策定」、(6)厚生年金病院‐「年金財源から投資せず廃止・売却を行なう」と回答(同省)。
 交渉団は「社会保険病院では経営実績と言うが医師がいない。地域に不可欠な病院でありどう考えているのか」と問いただし、国立病院での「看護助手不足による看護師業務増加とヘルパー導入問題」について追及しました。

総務省交渉
自治体病院の開設主体焦点に
 焦点の自治体病院の開設主体(民間委託、地方独法化、指定管理者制度、地方公営企業法の全部適用)をめぐる問題では、「今年度の閣議決定の方向なので、総務省の“指導”ではない。各自治体の判断」と述べ、「財政面のみで全部適用をめざすことには問題あり」(同省)としました。
 また、地方の深刻な医師不足問題では、「医師養成問題含め、医師需給計画を見直す。当面は各県で医療対策協議会を設置し対策強化を目指す」と回答。自治体病院のサテライト方式への再編では、「地方の実情をふまえ連携を検討すべき」「自治体病院は地域医療に対する役割を認識することが大事」と述べました。なお終了後、交渉団は全国自治体病院協議会で根岸事務局長と懇談を行いました。

文部科学省交渉
独法化後の労働条件など焦点に
 最大の論議は、独法化後の労働条件と運営費交付金の問題です。交渉団は、違法宿日直や、不払い残業の実態を報告しましたが、「いただいた事例は各大学に連絡しているが、基本的には各大学できちんとすべき」「三位一体改革等で予算を増やせる状況にない」と答弁。交渉団は、「今でさえ国立大の人員は少ない」「労基法違反が多く、人員や財政的手当をすべきで、病院改善指数による毎年2%削減方針は撤回せよ」と追及しました。
 省側は、「問題があることは認識している」「交付金の使途を特定できないが、超勤問題での予算措置は工夫を検討したい」と答弁。また「基本額を確保し、特別補助で総枠を増やしたい」(私学助成課)、「高度化・複雑化で、2人夜勤では大変で3人夜勤になってきている。厳しい情勢でも必要な交付金を確保したい」(医学教育課)と回答しました。

農林水産省交渉
地震被災施設への支援を
 最初に交渉団は、中越地震で被災し閉院の可能性がある、新潟厚生連・中条第2病院に対し、職員の雇用を守り病院再建のために、「農協法」融資基準の適用除外を要請しました。
 これに対し、省側は個別対応はできないとしながら、経営改善計画の延長を含め、「相談があればしっかり対応する。補修が必要な場合は早急に対応する」と述べました。
 JA財務基準の厚生連への適用除外については、「基準の指導を強めた結果、過剰反応の面もある。基準をクリアしていなくても、財務改善の計画を作り、達成していくなら融資を認めている。」と述べました。
 「食料自給率」については、「目標はあるが、国民の食生活の変化に対応しきれない面もある。食料産業の要請もあり、行政だけではなく広く取り組んでゆく」とのべるに止まりました。

財務省交渉
現場見た正確な政策判断を要請
 初めに財務省は「現在の厳しい国家財政の中で給付水準を抑えていく方法しか選択肢がない」と回答。
 交渉団は、「相次ぐ医療制度改悪で病院に行けず重症化するケースが増加しており、現場が極端に“効率化”され安心・安全とほど遠い伏況だ」、「内閣府の調査でも社会保障の充実を求める声が多数を占める。三位一体改革で中央・地方の格差が広がり、地方が崩壊していく」と追及しましたが、当局は「国家財政の厳しい状況を理解して欲しい」と繰返すのみでした。
 最後に交渉団は、机上の論理と数字だけで判断せず、地域と職場の実態を正確にみて政策判断を行うよう強く要請しました。

人事院交渉
人勧“査定昇給”の撤回を要求
 賃金改善では「専門職として評価することは重々心得ている」(人事院)の説明に、交渉団は「評価が低いこと、安全・安心の医療と看護確立もふまえた評価の必要性」を追求。俸給表構造の見直し・(査定昇給)については、当局が「現行の“評価制度”が運用できていない、本来の制度に足らない部分をたして活用するもの」と説明。交渉団は実績評価に基づく昇給制度(査定昇給)の矛盾点や、人事院勧告の大きな悪影響の問題を職場実態と合わせて指摘し、医療職場への導入の危険性を強く主張、撤回を要求しました。
 また、退勤時間調査集計を提供し、長時間労働・不払い時間外労働の改善、看護職の9回以上に及ぶ夜勤実態の改善などを要請しました。

独立行政法人 国立病院機構
“団体交渉制限”の撤回を要請
 04年4月の「団体交渉制限」通知について、機構は「団交は処理権限のあるところでやるべき。撤回は考えていない」と回答しました。これに対し医労連は、団交処理権限の有無の判断は施設長が行なうということだが、実態は「各施設の担当者が機構本部におびえながら窓口交渉をしている」、「施設は機構に問題のあることは報告できず、きれいなことだけを報告している」点を指摘、また「要求書を書き換えさせるのは不当労働行為」と厳しく追及しました。また医労連は「春に出した要求書に基づく交渉が今やっと行なわれている。要求書受け取りから一体何ヶ月で回答するのか」と追及、機構は「できるものは2週間以内でも支部に回答するよう努力している」と回答しました。