“医療の質向上と、労働者らしい闘いめざして”
日本の運動を学びたい 【ベトナム保健労組訪問記】

 ベトナム保健労組の招待を受けて11月28日〜12月4日ハノイを訪問した。

熱い歓迎を受けて
 空港では花束で迎えられた。ホテルはベトナム総同盟のゲストハウス、おもに組合員が宿泊する施設で6時から朝食、みんな早々と出かけていた。
 ベトナム総同盟表敬訪問、全国保健労組との会談、3つの病院訪問、保健労組はもちろん、訪問先の病院では院長・労組委員長など多数の歓待を受け、特にバクミン、ハタイでは「地方の病院を訪問してくれて嬉しい」と大変感謝された。

ベトナム医療事情
 人口約8千万人、医療費は無料、医療保険加入率は30%、2010年めざし公的医療保険制度構築中という。医療機関は約1千、大部分は公立(国・自治体半々の資金)だが、最近民間病院が21になり、急速に増える情勢にある(外国資本や株式会社など)。
 病院は、第1レベル(中央の8基幹病院)、第2レベル(県立中央病院)、第3レベル(地方の病院)。基本は国家予算での運営だが、独立採算を追求されている。患者は全て受け入れるので1600床に2千人、450床に654人など1ベッドに2人の実態があり、「差額ベッドなどサービス部門」で収益を上げ、病院運営や労働者の賃金に回している。

医療支援のあり方
 中央の病院は設備も整っているが、第2レベルでは、中央パイピングはなく酸素ボンベ、リード線が切れそうな古い心電図モニター、未熟児でも大人用点滴セットなど、設備の遅れが顕著であった。また、ODAで贈られた保育器が使えない、CT機器も4年で壊れ修理もできない等々、ODAのあり方を実感した。労組の役員は大部分が医師で、院長も労組も病院運営と医療の質向上に必死であった。

ベトナム保健労組の運動
 組合員30万人、組織率は、公立100%、民間30%。組合費は3%(2%は使用者、1%が組合員)と法律で決まっており、公立は国が2%出すが、民間は経営者が出さないので組織率は30%。
 フン委員長はハノイ医科大学教授出身の女医。副委員長、婦人連合など専従は11名。医療省の週1回の会議には、全国保健労組からも参加し、政策・計画の議論に意見をだしている。
 ベトナムの賃金は高い順に、1軍人、2警察・公安、3郵便職員、4石油関係、5教員、6公務員。医師は公務員なので低く、看護師は医師の80%、医師は「6年間の教育を受けているのに賃金が低い」と10%の賃上要求をしている。
 労組は「政府の方針と労働者の生活を守る」という役割があるが、「ドイモイ(市場化)」で矛盾が広がっており「市場経済」日本での闘いの経験・教訓を教えてほしいと「保健労組セミナー」に日本医労連から講師派遣を要望された。

思いは同じ
 私自身、ベトナム戦争反対の中で育ち今に至っている。戦争で勝った自信と、戦争で遅れた国の再建のために医療の質向上、労働者の生活を守るため頑張っている保健労組の仲間に心から連帯した訪問であった。

(日本医労連中央執行委員長・田中千恵子)