「准看護婦の移行教育に関する検討会」報告についての見解

日本医療労働組合連合会
1999年4月21日

1)本日、准看護婦の移行教育に関する検討会(座長・黒川清東海大学医学部長)は、看護職員の資質の向上と、修業経験の長い准看護婦が希望している看護婦への道を広げるため、准看護婦の看護婦への移行教育について、以下の要旨の報告をまとめた。

〇移行教育は、就業経験10年以上の准看護婦を対象者に、実施期間は5年間とする。移行教育は、就業継続を前提とし、就業経験を考慮して問題解決型の教育内容とし、放送大学を活用した理論学習(放送授業と印刷教材)と移行教育所での技術学習で構成し、教育時間は 930時間(31単位)とする。移行教育の国家試験は、他の看護婦養成課程と同一の国家試験として行う。国は移行教育が着実・円滑に推進していけるよう支援し、都道府県は受講者への助言、勤務先医療機関ヘの協力依頼、学習推進支援者への支援を行う必要があり、医療機関は勤務時間、勤務形態、年休取得等に配慮することが望ましい。国は移行教育の受講希望者等を把握し、開始時期は関係者と協議する。

2)この報告の内容は、移行教育開始時点で就業経験5年以下の准看護婦を移行教育の対象から除外しているほか、就業継続を前提とした移行教育のカリキュラム時間数としては受講者の負担が大きいこと、学習推進支援体制の確立にむけた国の施策が具体性に欠けることなどの不充分さはあるが、21世紀に向けた准看護婦養成のあり方として、准看護婦問題調査検討会がまとめた提言(*注1)の具現化と受け止め、看護婦養成制度の統合に向けて、就業経験の長い准看護婦が看護婦資格を取得するための特別の措置として評価したい。

3)この報告を受けて国は、移行教育が速やかに、かつ、着実に推進されるよう、保健婦助産婦看護婦法等の改正、移行教育カリキュラムと指定基準の制定、移行教育所の専任教員や学習推進支援者の養成・確保、移行教育対象者への情報提供と受講者の把握、移行教育に関わる関係者への周知徹底、移行教育に関わる予算の確保等、必要な施策を推進しなければならない。併せて国は、引き続き関係者と看護婦養成制度の統合に向けた協議をすすめ、21世紀初頭の早い段階に看護婦養成制度の統合を達成し、全ての准看護婦を対象とした移行教育の実施にむけて、必要な施策を講じなければならない。

4)准看護婦制度は、国が戦後の看護婦不足に対応する措置として1951年に発足させ、以来48年間続いてきた。国と関係者は、これまで養成された100万人をこえる准看護婦がこれまでのわが国の医療・看護を支え、また現在就業している40万8千人の准看護婦が果たしている役割を正当に評価し、一致協力して問題解決にあたることが求められている。少子高齢社会といわれる21世紀を目前にひかえ、看護分野に優秀な人材を確保し、医療の高度化と専門化に対応して、患者の安全を確保しながら看護業務が遂行できる必要な人員の確保と看護婦の資質の向上をはかることは国民的課題である。日本医労連は、21世紀の看護婦養成の基礎教育は、高卒3年以上の学校教育法1条に基づく教育制度で行われるべきと考え、そのために准看護婦養成制度を廃止し、全ての准看護婦を看護婦に切り替え、看護制度の一本化の実現にむけて奮闘する決意である。

(注1)准看護婦問題調査検討会がまとめた提言(抜粋)
〇現行の准看護婦養成課程の内容を看護婦養成課程の内容に達するまでに改善し、21世紀初頭の早い段階を目途に、看護婦養成制度の統合に努める
〇現在約40万人の准看護婦・士が就業しており、…これらの准看護婦・士は看護婦・士への道の拡大を切望している…。このことを踏まえ、…現行の養成課程を見直し、勤務年数を考慮して実習時間を免除したり、衛星放送等を活用して働きながら学習することのできる自宅学習プログラムを組み込む等、教育のレベルを確保しながら、准看護婦・士資格を有する者が看護婦・士資格を取得するための方策を検討すべきである

以  上