移行教育への准看護婦・士の高い希望に応え、
厚生省は早期実施を決定し、支援措置を確立せよ
- 厚生省調査結果概要の判明にあたってのコメント -

2000(平成12)年8月24日
                           日本医療労働組合連合会
                            副委員長 大 村 淑 美
                            (看護婦闘争委員会事務局長)

(1) 厚生省が本年2〜3月にかけておこなった「移行教育の実施に向けての調査」の結果概要が明らかになりました。この調査は、「移行教育」の受講を希望する准看護婦・士の人数及び移行教育所(仮称)の確保見込み数等について調査し、実施に向けて必要な基礎的資料を得ることを目的に実施されたものです。調査対象となったのは、抽出された1,092病院など1,677医療機関に勤務する本年4月1日時点で就業経験年数満5年以上の准看護婦・士全員(22,655人、有効回収数15,027人、回収率66.3%)と、看護婦・准看護婦学校養成所1,236校(回収率95.7%)です。その主な内容は、次のようになっています。
1 「移行教育」の受講希望ありは73.2%と極めて高い割合となった。年代別では30代前半が89.9%で最も高く、40代前半までは8割を越えたが、40代後半70.9%、50代前半60.6%と年齢が高くなるほど希望が下がり、50代後半49.4%、60歳以上48.5%と、5割をきった。
2 対象者(准看護婦・士)の希望する移行教育所の学習パターンでは、週1日型が35.7%と最も多く、次いで隔日夜型19.7%、隔日昼型18.3%となった。逆に、希望が少なかったのは、集中型4.5%、毎日昼型5.2%、全日型7.4%、毎日夜型9.2%などであった。
3 学校養成所の開校の意向については、「積極的に開校したいと考えている」2.6%、「要望があれば開校しなければならないと考えている」12.9%で、開校の意向を示したのは15.5%に止まった。逆に、開校に消極的な意向を示したのが56.7%と過半数を占め、27.8%が「現時点では判断できない」と回答した。
4 開校が難しい理由(理由記述欄より、重複回答あり)としては、「新たな専任教員の確保困難」242件、「施設・設備にゆとりがない」205件、「現在の専任教員数にゆとりがない」163件、「施設・設備が整わない」122件、「関係省庁・設置主体から指示がないため回答できない」72件、「運営費面で困難」64件、「情報不足で判断できない」63件、「養成所廃止予定のため」52件などが挙げられた。
5 学校養成所の開校パターンでは、週1日学習型が61クラスで最も多く、次いで集中型58クラスで、隔日型、毎日型、全日制型は比較的少なかった。

(2) 受講希望ある者が73.2%にも達したということは、「移行教育」に対する准看護婦・士の強い希望・期待を示すものです。厚生省はこの期待に応え、一刻も早く「移行教育」を実施に移すことが求められます。しかし、厚生省の「准看護婦の移行教育に関する検討会」が報告書を出してすでに1年4ヶ月経過しましたが、未だにその開始時期は明確にされておらず、必要な保助看法の改正案も国会に提出されていません。厚生省は、早期に「移行教育」の実施時期を明確にすべきです。

(3) 移行教育検討会報告では、「移行教育」の対象者は「就業経験10年以上の准看護婦・士で移行教育の受講を希望する者」とされています。受講希望が4分の3にも達したということは、22万人を越える極めて大規模な対象者数となることを意味します。その規模の大きさから考えても、厚生省は希望者の受講を保障する計画を策定し、移行教育所の設置や教員の確保、勤務軽減措置など受講を保障する支援措置、環境づくりを早期に具体化することが求められます。

(4) 准看護婦・士の高い希望に反して、学校養成所の消極的な意向が示されたことは、実施に移す上で重大な課題となるものです。その理由としては、施設・設備や教員にゆとりがない、整わないということが挙げられています。これは、現在の貧困な看護教育の現場実態を示すものです。同時に、「移行教育」が5年間の時限措置である特殊性もあわせて考えるなら、一般的な指定校方式で、手を挙げた学校養成所等を移行教育所に認可するというだけでなく、厚生省や行政が責任と計画を持って、受講希望者数に対応できる十分な数の移行教育所を設置することが必要だと言えます。

(5) 開校パターンに関しては、准看護婦・士、学校養成所とも週1日型が最も多くなりましたが、実際には准看護婦・士と学校養成所の意志・希望に大きなギャップがあると思われます。学校養成所側は余裕のない施設・設備、教員数から対応が困難と回答するか、何とか授業のない休日や長期休暇での開講を模索するという面が強く伺われるのに対して、その多くが就労している准看護婦・士は勤務の合間を縫っての受講を希望していると見られるからです。同じ週1日型が多いといっても、両者の意図している内容には大きな開きが出ざるを得ません。厚生省や行政は責任を持って、その設置数を確保するだけでなく、受講を保障できるよう、多様な時間帯の開講を確保すること、近隣に設置し通学時間を短くすることが求められています。

(6) 日本医労連はこの間、「移行教育」の早期実施と看護制度の一本化を求めて、厚生省や各都道府県との交渉をはじめ、全国各地で移行教育学習会など多様な行動をすすめてきました。次期通常国会での保助看法改正をめざして、新たな署名運動も開始しています。今回の調査結果は、准看護婦・士の「移行教育」への極めて強い期待をあらためて示すとともに、移行教育所をめぐる重大な課題を明らかにしました。高齢社会の進行、医療事故の続発の中で良質な医療・看護が求められており、看護のレベルアップのためにも、「移行教育」は緊急かつ重要な課題と言えます。日本医労連は、「移行教育」の早期実施と希望者全員の受講を保障する計画策定、充実した支援措置を求めて、引き続き運動を強化していく決意です。

問い合せ先 TEL03−3875−5871
 看護婦闘争委員会事務局・大村淑美、井上久

以     上