准看護婦の移行教育に関するアンケート
集 計 結 果 (速報)

1999年11月15日
日本医療労働組合連合会


T アンケート結果の概要

1、アンケート調査の実施について

 厚生省の『准看護婦の移行教育に関する検討会』は本年4月21日、報告書をとりまとめました。
 これを受け、日本医労連として、今後具体化される「移行教育」の実施方法や支援措置の確立に、現場の准看護婦・士の実態や要望を反映させていくため、8月から『准看護婦の移行教育に関するアンケート』にとりくみました。
 具体的には、日本医労連に加盟する労働組合を通じて、准看護婦・士にアンケート用紙を配布し、記入・回収するという方法でとりくみました。回収時には各組合でまとめ、施設別集計もあわせておこなうようにしました。
 アンケートは全国でとりくまれ、11月初めまでに施設別集計で4,000人を超える集約が寄せられています。しかし、年代別などでクロス集計をおこなう関係から、今回発表する『集計結果(速報)』は、10月13日までに日本医労連本部に、個人別のアンケート回答用紙が届いた分で打ち切り、集計作業をおこないました。
 したがって、この『集計結果(速報)』は、41都道府県から寄せられた2,892人の個人回答の集計報告となっています。

2、集計結果の概要

(1) 平均年齢45.6歳 ベテラン准看護婦中心

 回答者の属性では、40歳以上が4分の3(74.8%)を占め、平均年齢は45.6歳となりました。就業経験年数でも、20年以上が3分の2(66.7%)を占め、平均就業経験年数は22.9年となっています。長い間苦労して働きつづけてきたベテラン准看護婦・士中心のアンケート結果です。
 勤務先では、病院が95.4%で、大半を占めています。

(2) 移行教育に対する期待高い
        移行教育の受講希望するが、希望しないの約2倍


 移行教育の受講(問10)については、「希望する」が4割強(41.6%)と、「希望しない」(22.9%)の2倍近くになりました。「わからない」は3分の1(34.6%)でした。
 「移行教育」の具体的な実施方法や支援措置がまだ決定されていない中で、「希望する」が4割を超え、「希望しない」の2倍近くに達したことは、「移行教育」に対する准看護婦・士の期待の高さを示すものです。今後、「移行教育」の具体化と周知がすすめば、「希望する」は相当高くなるものと思われます。
 また、「希望する」は20代、30代で6割程度と高く、40歳を超えると減少していき、55歳以上では2割(21.9%)まで下がっています。

(3) 年齢的な問題が大きな障害に
     受講する段階では若い世代は経済面、40歳以降は職場面の支援大切


 「移行教育」を受講する場合の障害(問11、2つまで回答)としては、「受講を継続する気力・体力」が39.0%と最も高いなど、移行教育への最大の障害は年齢であることが明らかになりました。
 特に、移行教育の希望を受講しない者の理由(問18、2つまで回答)では、「まもなく仕事を辞める予定だから(定年が近いなど)」が45.2%でトップとなっています。
 移行教育の受講を希望する者だけに限って、障害(問11)をみてみると、「職場の理解・協力」が40.1%でトップ、次が「学費等の経済的問題」・37.1%でした。20代、30代では「学費等の経済的問題」がトップとなっており、40代前半以降では「職場の理解・協力」とともに、「受講を継続する気力・体力」「受講についていく能力」が高くなっていきます。
 したがって、「移行教育」を実際に受講する段階では、若い年代は経済的な側面に、年代が高くなると職場そして年齢的な要素に配慮した支援が大切になります。

(4) 求められる支援措置は 特別休暇など勤務軽減と収入の維持

 国の支援措置として望むこと(問12、2つまで回答)では、「特別休暇制度」が48.5%でトップ、次が「授業料の軽減」で39.0%を占めました。「特別休暇制度」は各年代で4割強から5割程度でした。「授業料の軽減」は20代、30代が6割程度と高く、40代から急激に下がっています。
 経営者に望む支援措置(問13、3つまで回答)では、「今の収入の維持」が60.4%でトップ、
続いて「職場の理解と支援づくり」・39.3%、「受講者への特別休暇」・28.6%、「勤務日の調整」・26.5%、「移行教育所への通学の便宜」・23.6%などとなっています。
 「移行教育」が就労を前提としながら、930時間とかなり長くなった中で、「移行教育」の受講をこなすには一定の勤務軽減が必要だが、収入減になっては生活していけない、したがって特別休暇制度など勤務軽減措置を制度的に保障してほしい、ということです。

(5) 移行教育への対応  1日に取れる自己学習時間は1〜2時間
              移行教育所への通学は休みの日の昼間が中心
              国家試験は移行教育の内容に合わせて


 「移行教育」のうち、「理論学習」(660時間)への対応について聞いた問14では、1日にとれる自己学習時間は1時間から2時間程度に4分の3(75.0%)が集中し、平均推定時間は86分となっています。また、子育てなど家庭の負担が大きいと思われる30代から40代前半では、1時間程度以内が5割を超えました。
 「移行教育」の履修を1年で終わらせるには、一定の勤務軽減措置が必要だということがわかります。

 移行教育所でおこなわれる「技術学習」(270時間)への対応を聞いた問15では、「平日に勤務のない昼間の時間帯に通う(1回3時間・90日間)」が35.9%でトップでした。「平日に仕事が終わってから通う(1回3時間・90日間)」は7.5%、「夏・冬など集中した期間に通う(1回6時間・90日間)」は6.7%と低くなっています。
 移行教育所への通学は勤務のない日の昼間が中心になるということです。

 国家試験の内容(問16)については、「移行教育の内容に合わせた国家試験の内容とすべき」が3分の2(63.8%)を占め、「現行の国家試験の内容でよい」は1割(10.2%)でした。
 「移行教育」は現行の3年課程、2年課程とは違い、就業経験の長い准看護婦・士を対象に、問題解決型の教育をおこなうのですから、当然、その内容に国家試験を合わせてほしいということです。

(6) 准看護婦制度の廃止を早く

 准看護婦制度については、「廃止すべき」が5割強(53.7%)となり、「存続すべき」は1割(10.4%)、「わからない」は3割(29.8%)でした。
 「廃止すべき」は20代では4分の1(25.0%)ですが、年代とともに上がり、50代では7割(69.6%)となっています。逆に、「わからない」は20代の5割(50.0%)から、年代があがるとともに下がって、55歳以上では1割近く(12.3%)まで下がっています。
 つまり、准看護婦・士は職場での実体験を通して准看護婦制度の矛盾を感じ、その廃止を強く求めるようになるということです。准看護婦制度が重大な問題点をはらんでいることをあらためて証明するものです。
 『准看護婦問題調査検討会報告書』(96年12月20日)が提言した、21世紀初頭の早い段階における看護婦養成制度の統合(准看護婦養成の停止)の早急な実現・具体化が強く求められます。
《 以下、略 》