個人調査結果・速報版(抜粋)

2001年 5月 9日
日本医療労働組合連合会
A 調査の実施概要

1、名 称
 日本医労連・「看護現場実態調査」

2、目 的
(1) 看護労働者の労働と生活、健康などの現状を正確に把握する。96年に実施した「医療労働者の労働・健康実態調査」などとも一定の比較をおこない、この間の変化も明らかにする。
(2) 「看護婦110番」で明らかになった未組織の看護現場の実態とも連動させ、新「看護職需給見通し」の論議に反映させたり、医療法や診療報酬の改定にむけて、医労連の運動資料、増員要求の根拠として活用し、看護婦の大幅増員・200万人以上看護体制実現の運動をいっそう推進する。
(3) 新たに設置する「看護プロジェクト」((1)外来・手術室看護、(2)看護「合理化」と看護改善)の論議に反映させる。また、2001年9月に日本で開催される国際夜勤シンポへのレポート提出等に活用していく。

3、調査の種類と内容
(1)個人調査  組合員である看護職員を対象に実施
 看護職員(看護婦・准看護婦)の実態を明らかにするため、医労連組合員である看護職員を対象に、個人アンケート形式でおこないました。なお、調査項目(調査用紙)は後掲資料を参照ください。
(2)施設調査  指定した一部の病院のみで実施
 「施設調査」は、病院性格や規模、看護体制、患者状況等を把握して、「個人調査」の比較分析をおこうために、対象病院をしぼって実施しました。同時に、「個人調査」では明らかにできない、施設・職場ごとの看護実態や労働条件等をサンプル的に把握するものとしました。

4、実施期間
  2000年8月20日〜9月30日(8月の勤務実績を基本とした)

5、集約数等について  約3万人分を集約
 最終的に3万人を越える回答が寄せられましたが、他職種からの回答や職種不明が一部あり、今回の「個人集計結果・速報版」は、看護職員28,741人分の集計結果となります。
 なお、11月締切り以降に寄せられた分も可能な限り入力しましたが、一部未入力となっているものがあります。

B 調査結果の概要

個人調査結果・速報版のまとめ

(1) 個人調査結果・速報版は、看護職員28.741人(就業看護職員の約2.5%)の集約結果となっています。平均年齢35.1歳で、20代が4割(39.4%)を占めており、専門職でありながら働きつづけられない若い年齢構成となっています。
 現在の職場・部署に配属になっての年数が・職場になっての年数が、満2年未満が5割(49.6%)にも達しており、看護の蓄積、安全でゆきとどいた看護の上から大きな問題です。

(2) 労働条件関係の項目では、看護婦の劣悪な勤務実態が浮き彫りになりました。看護婦確保法・基本指針に違反する月9日以上の夜勤者が4分の1(24.9%、3交代)にも達しました。残業時間は増加傾向で、サービス残業なしは4割弱(37.6%)に止まりました。年次有給休暇の消化は年4日以下が2割(20.8%)で、取れない理由は要員不足が7割(71.0%)となっています。当直制でも、日常的に業務があるが4分の3(73.4%)に達しています。生理休暇が取れないは9割(91.9%)で、妊産婦の夜勤免除もまともに守られていません。
 人のいのちをあずかり、心身に負担の大きい夜勤・交代制勤務に従事しながら、労働法規も満足に守られていない深刻な実態です。このため、休みの日は、家事・育児と休息が中心となっており、人間らしい生活は後回しという状況です。

(3) 看護業務については、患者さんに十分な看護ができているは1割以下(8.2%)に止まり、ミスやニヤミスの経験が9割を越える(93.8%)という深刻な事態です。医療事故が続発している原因としては、医療現場の忙しさ85.0%、交代制勤務による疲労の蓄積41.5%などがあげられています。医療事故を防止し、安全でゆきとどいた医療を実現するためにも、看護婦を大幅に増やし、労働条件を改善することが急務となっています。

(4) 厳しい労働条件の下で、心身の健康状態も深刻な状況となっています。健康不安が7割(70.5%)、慢性疲労8割(79.0%)に達しています。この1年間に、病気治療した人が6割強(63.0%)、病気で仕事を休んだ人が4割(41.8%)です。
 こうした中で、看護の仕事に本来的なやりがいを感じつつも、仕事に追いたてられて日々の充実感はうすく、燃え尽きていっている状況となっています。
 仕事を辞めたいと思っている人が3分の2(67.6%)にも達しており、しかも、辞めた後は4割(40.1%)が看護の仕事を離れるという結果になっています。辞めたい理由は、仕事が忙しすぎるから56.3%、仕事の達成感がないから32.5%、本来の看護ができないから30.5%、夜勤がつらいから25.7%、休暇が取れないから22.6%などとなっています。

(5) 看護婦が人のいのちと健康を守る仕事に生きがいをもって、働きつづけられるように、そして、患者さんに安全でゆきとどいた看護が提供できるようにするために、看護婦を大幅に増やし、労働条件を改善し、人間らしい仕事と生活を保障することが切実に求められています。

T 基本項目(回答者の属性)

(1)約3万人分を集約  看護職員で28,741人
 集約された「個人調査」は30,200人分(職種不明除く)となりました。職種の内訳は、「(1)保健婦」146人(0.5%)、「(2)助産婦」1,089人(3.6%)、「(3)看護婦・士」23,466人(77.7%)、「(4)准看護婦・士」4,040人(13.4%)、「(5)看護助手」1,175人(3.9%)、「(6)その他」284人(0.9%)となっています。
 看護職員以外が1,459人分ありますが、調査目的を看護職員の実態把握としていたこと、および調査項目も看護職員以外答えにくい項目が多くあることから、看護職員に限った報告としました。したがって、この「個人調査結果・速報版」は看護職員28,741人分の集約結果となります(なお、以降の項目も全て、未回答を除いて集計しています)。

(2)平均年齢35.1歳、20代が4割占める
 年齢では、「20代後半」が最も多く21.3%、次いで「20代前半」18.0%、「30代前半」13.4%、「40代前半」12.9%、「30代後半」12.1%などとなっています。20代が4割(39.4%)を占め、34歳以下で過半数(52.8%)と、専門職でありながら非常に若い年齢構成となっています。
 30代に入ると構成割合が一度下がり、50歳直前から急激に下がっていく形となっています。結婚・出産等を契機に退職し、さらに50歳近くからは体力的に働き続けられなくなるということを示しています。
 平均年齢は35.1歳で、中位年齢33歳、最高69歳、最低20歳でした。配偶関係では「(1)未婚」43.6%、子供ありが52.2%となっています。

(3)通算勤続年数13.4年目、現在の部署で1〜2年目が5割
 看護職としての通算勤続年数は、平均13.4年目(10年目以下48.5%)、現在の勤務先での勤続年数は、平均10.6年目(10年目以下61.2%)です。
 現在の職場・部署に配属になっての年数では、「1年目」27.6%、「2年目」22.0%、「3年目」16.9%などとなっています。満2年未満が5割(49.6%)、満3年未満が3分の2(66.5%)を占めています。人のいのちを直接あずかる職場でありながら、しかも医療内容も高度化し、医療事故が社会問題となる中で、この異常に短い職場年数・配属年数は、看護の蓄積、安全な医療の上からも早急に改善される必要があります。

(4)正職員95.8%、病棟77.9%、3交代72.6%など
 雇用形態では、「(1)正職員」が95.8%を占め、勤務する職場では「(1)病棟」77.9%、「(2)外来」12.2%、「(4)手術室」4.3%などとなっています。通常の勤務形態では、「(2)3交代」72.6%、「(1)日勤のみ」9.8%、「(3)2交代」7.8%、「(4)日勤と当直」6.9%などです。また、勤務先の設置主体では、国公立や公的病院が合せて73.2%を占めています。
 一定規模の病院で、正職員として第一線で働く交代制勤務者中心の調査結果と言えます。

U 週休制と残業、年次有給休暇

(1)完全週休2日制は4割
 週休の形態では、「(1)完全週休2日制」41.2%、「(2)4週8休制」27.2%、「(4)隔週週休2日制」21.2%となりました。国公立、公的病院の看護職員が多かった反映です。

(2)残業時間は増加傾向、サービス残業なし4割弱
 8月の残業時間では、「10時間未満」が49.5%、「10〜20時間未満」23.0%などとなっています。大半が交代制勤務者ですが、「20〜30時間」9.3%(前回4.5%)、「30時間以上」6.4%(前回2.6%)と、明らかに増加傾向があらわれています。「残業なし」は11.8%に止まりました。
 この結果、平均残業時間は9.0時間となっています。しかし、「始業時刻より平均で何分前に仕事に就いているか」では平均16.0分、「終業時刻より何分間残って仕事をしているか」では41.2分と、合せて1時間近い時間外労働となっており、実際の残業時間はさらに多いものと推計されます。特に、終業後労働時間では、1時間以上が35.0%を占め、2時間以上も5.8%となっており、忙しくて仕事が終わらない状況を示しています。
 8月のサービス残業では、「なし」は37.6%に止まり、残業代の不払いが横行している状況です。しかも、「10〜20時間未満」12.3%(前回8.1%)、「20〜30時間未満」3.8%(前回1.1%)、「30時間以上」2.9%(前回0.9%)と、サービス残業も顕著に増加しています。サービス残業時間は平均4.9時間となりました。
 休憩時間については、30分程度以下が、「(1)日勤」14.5%、「(2)準夜」52.2%、「(3)深夜」26.2%、「(4)2交代の夜勤」13.1%となっています。休憩時間すら規定通り確保できない状況であり、特に準夜帯で休憩がとりにくい状況が目立っています。

(3)年休消化は4日以下が2割、理由は要員不足7割
 昨年保有していた有給休暇では、「40日以上」44.0%、「20日以上」81.3%で、平均29.8日となりました。
 しかし、実際に昨年1年間にとった日数では、平均10.4日に止まっており、「0日」4.1%、「1〜4日」16.7%となっており、4日以下があわせて2割(20.8%)です。
 年次有給休暇を使い残した理由(強い理由から3つまで回答可)では、「(2)要員不足のため同僚の迷惑になるから」がトップで71.0%(第1位の理由のみで39.8%)を占めており、人手不足で消化できない状況です。
 なお、「(1)自分や家族の病気や急な用事のために残しておく」が45.8%(第1位で25.0%)を占めており、年休消化20日以上が14.4%ありますが、実際の病休との関係を図表65-2に掲載しています。

V 夜勤・当直勤務

(1)月9回以上の夜勤が4人に1人も(3交代)
 8月の夜勤・当直回数は、まず、3交代制は、「8回」が最も多く50.5%で、「9回」17.7%、「7回」11.6%、「10回以上」7.2%などとなり、平均回数は7.79回でした。看護婦確保法・基本指針の制定から8年が経過しているにもかかわらず、法違反の9回以上が4分の1(24.9%)にも達しています。
 2交代制では、5回以上が49.5%にも達し、平均回数は5.25回となりました。一部に、3交代制に換算して回数を書いた人もあると推定されますが、3交代制以上にひどい結果となっています。人員配置の少ないところでの実施の影響などが出ていると思われます。なお、2交代夜勤の拘束時間は、16時間以上が8割(79.3%)を占めており、大半が3交代制の準夜・深夜2回分の勤務となっています。
 当直制では、週1回以上となる5回以上が5.9%となっています。

(2)深夜勤中の仮眠あまりとれず、当直制でも半数どまり
 深夜勤務の心身への負担を軽減するには、仮眠をとることが重要とされています。しかし、深夜勤中の仮眠については、「(4)全くできない」43.8%、「(3)あまりできない」28.9%と、7割(72.7%)を越えています。
 長時間夜勤となる2交代制についても、「(1)いつもできる」「(2)だいたいできる」を合せても過半数(54.8%)に止まっています。さらに、通常業務が許されない当直制でも、「(1)いつもできる」3.9%、「(2)だいたいできる」45.6%と、深刻な実態です。
 「(1)いつもできる」「(2)だいたいできる」と答えた人のみに聞いた仮眠できる場合の平均時間は、3交代・61.6分、2交代・108.8分、当直制168.6分となりました。
 深夜帯を含む勤務前の睡眠(仮眠)時間については、2時間程度以上が3交代73.6%に対し、2交代58.6%となるなど、2交代の方がかえって短いという結果となりました。夕食準備や子育てなどの家庭生活の影響と思われます。

(3)当直制では法違反の通常業務ありが4人に3人
 当直時の仕事の状況では、「(1)通常業務はほとんどない」はわずか3.5%でした。「(3)よく業務が入るが一定睡眠はとれる」が35.4%、「(4)忙しくて仮眠もあまりとれない」38.0%でした。あせると「日常的に業務がある」が4人に3人(73.4%)にものぼります。労基法上、通常業務がないことが、当直制の許可条件ですが、明らかに労基法に違反する当直制が横行しているという実態です。
 実際には業務が多く、十分な睡眠もとれないにもかかわらず、当直明けの勤務では、「(1)朝勤務明けで帰れる」は64.1%に止まっており、「(2)昼まで勤務」が22.5%、「(3)通常通り夕方まで勤務」6.8%という状況です。
 医療事故の続発という事態を考えても、心身に負担の大きい夜勤回数の軽減や長時間夜勤の規制、当直制から交代制への変更などの対策が急務となっています。

W 休日の過ごし方、仕事をしていく上で大切なこと

(1)休日は休息と家事・育児におわる
 現在中心となっている休日の過ごし方(強いものから2つまで回答可)では、第1位で「(1)家事、育児の時間」35.2%、「(6)休息中心の時間」33.8%となりました。第2位では、「(1)家事、育児の時間」は9.6%に減少しましたが、「(6)休息中心の時間」は28.4%あり、「(2)趣味・娯楽の時間」18.7%、「(4)交際、外出、旅行」18.7%、「(3)家族との団欒」15.7%などとなっています。
 不足している休日の過ごし方(強いものから3つまで回答可)では、第1位・第2位の合計で、「(2)趣味・娯楽の時間」46.6%、「(4)交際、外出、旅行」43.8%、「(5)勉強や知識の習得」41.0%などとなっています。「(6)休息中心の時間」は29.4%、「(3)家族との団欒」は23.6%でしたが、「(1)家事、育児の時間」は6.3%でした。
 独身者、子供なしが共に半数程度ということを考えると、最低必要な家事・育児、付き合いをこなし、勤務の疲れを取るというのが休日パターンですが、それでも休息は不足気味と言えます。また、趣味や娯楽、旅行などの人間らしい生活や、専門職として必要な勉強は非常に不足している状況です。

(2)今後仕事をしていく上で大切なものでは、休みが上位に
 今後仕事をしていく上で大切なもの(強いものから3つまで回答可)では、第1位で、「(1)連休がほしい」26.3%、「(5)長い休暇がほしい」18.5%が他を引き離し、「(2)夜勤回数を減らしたい」10.2%、「(10)専門的な技術、能力を高め、発揮したい」8.8%、「(7)不規則な勤務をやめたい」8.3%などとなっています。看護現場の忙しさと交代制勤務の中で、まず疲れをとる長めの休みがほしい、そして夜勤など不規則な勤務を改善してほしいという結果となっています。
 「(9)余暇、趣味の時間をもっととりたい」(第1位7.2%、第2位16.2%、第3位19.3%)と「(10)専門的な技術、能力を高め、発揮したい」(第1位8.8%、第2位10.3%、第3位14.3%)は、第2位、第3位で高くなっていきます。疲労回復の上で、人間らしい生活や専門職としての成長を望んでいるということであり、それだけ現状の勤務が厳しいということです。

X 母性保護関係

(1)生理休暇取れない9割、妊娠の状況で順調は6人に1どまり
 生理の周期(女性のみ)については、「(1)順調である」は44.4%に止まり、「(2)時々不順」30.0%、「(3)不順である」17.1%となりました。
 生理休暇の取得状況(女性のみ)は、「(3)とれない」が91.9%(前回85.0%)と9割を越え、「(1)毎潮時とっている」はわずか4.5%(前回8.9%)に止まりました。前回よりさらに数字が悪化しています。忙しさが増し、人手不足の中で、生理休暇はほとんどとれないという状況です。
 妊娠の状況(99年4月以降に妊娠・出産した人のみ、該当するものを全て選択)では、「(1)順調」は16.9%(前回18.1%)と、6人に1しかありませんでした。そして、「(2)つわりがひどい」38.2%(前回38.1%)、「(3)貧血」36.8%(前回30.0%)、「(6)むくみ」32.3%(前回23.1%)、「(4)切迫流産」31.9%(前回30.3%)、「(5)出血」22.6%(前回14.1%)などとなっており、ほぼ全項目で前回よりポイントが上がる深刻な状況です。

(2)産前の夜勤免除は6割どまり、何の措置も受けなかったが2割も
 産前に受けた保護措置(99年4月以降に妊娠・出産した人のみ、該当するものを全て選択)では、「(8)とくに措置は受けなかった」が2割(20.5%)もありました。
 受けた措置では、「(1)夜勤・当直免除」60.0%、「(2)夜勤・当直日数の軽減」20.5%であり、他の項目はいずれも1割以下という結果でした。
 また、妊娠後に夜勤・当直免除を受けた期間(受けた人のみ対象)では、妊娠6ヶ月目以降が55.8%と過半数を占めています。
 妊婦の夜勤・当直免除すら、満足に守られない状況です。

(3)育児休業取得は7割に、産後1年の夜勤禁止も守られず
 出産後に受けた保護措置(99年4月以降に妊娠・出産した人のみ、該当するものを全て選択)では、「(5)育児休業・休暇」が7割(72.1%)に達しています。この間におきた大きな変化と言えます。
 「(1)夜勤・当直免除」41.0%、「(4)育児時間」39.6%となっており、育児休業を1年以上受けた人を加えても5割程度という実態です。他の項目はいずれも1割以下でした。
 出産後に夜勤・当直免除を受けた期間(受けた人のみ対象)では、12ヶ月以上は6割に止まっており、4割が産後1年間の夜勤禁止が守られていません。
 育児休業・休暇を受けた期間(受けた人のみ対象)では、12ヶ月以上が26.9%、9ヶ月以上で半数(50.0%)という結果でした。
 「(11)とくに措置は受けなかった」は5.0%に止まりましたが、育児休業制度を活用した人が7割いたことの影響が大きくなっています。出勤して働き出すと、夜勤免除をはじめとした保護措置は、やはり満足にとられていないという状況です。

Y 看護業務の状況

(1)十分な看護ができている8.2%、できない理由は人手不足と忙しさ
 「患者さんに十分な看護が提供できていますか」では、「(1)できている」はわずか8.2%に止まり、「(2)できていない」が56.7%と過半数を占めました。「(3)わからない」が35.1%でした。
 「十分な看護ができていない理由」(強い理由から3つまで回答可)としては、第1位から第3位の合計で、「(1)人員が少なすぎる」72.4%、「(2)業務が過密になっている」71.1%が7割を越えており、「(10)看護業務以外のその他業務が多すぎる」48.0%、「(8)自分の能力や技量の不足」30.3%と続いています。
 第1位の理由だけでみると、「(1)人員が少なすぎる」53.3%、「(2)業務が過密になっている」23.2%となっており、「(10)看護業務以外のその他業務が多すぎる」(6.3%)、「(8)自分の能力や技量の不足」(8.4%)や他の項目はいずれも1割以下となっています。
 人手不足と過密な業務で、十分な看護が提供できていないという状況が、鮮明に物語られています。

(2)担当する患者数多いが半数近く、業務量増えたは6割
 「担当する患者数」(については、「(2)適当」が最も多く46.8%を占めましたが、「(1)多い」が45.8%と拮抗しており、「(3)少ない」はわずか2.0%でした。
 「最近、看護業務量は変化しましたか」では、「(1)増えた」が57.6%(前回52.1%)を占め、「(3)減った」は3.0%(前回5.1%)に止まりました。「(2)変わらない」は39.4%(前回42.7%)でした。年々看護業務量が増え、職場は忙しくなっている状況であり、さらに「(1)増えた」の割合が前回より増加したことは、いっそう深刻さを増しているということを表しています。

(3)入院日数の短縮等が業務量増えた原因か
 「主に増えた看護業務は何ですか」(業務量が増えたと回答した人のみ、3つまで回答可)では、「(1)患者の世話」が54.1%と最も多く、続いて「(3)記録・申し送り・報告など伝達業務」36.4%、「(9)電話対応・コンピューター入力・伝票や書類整理などの事務業務」33.2%、「(5)会議・研修」27.2%などとなっています。
 最近、入院日数短縮やベッド稼動率のアップが病院の経営方針の中心になっていますが、患者の入れ替わりの激しさやそれに伴う患者への対応で、看護業務が増えているということが如実に示されています。
 「(3)記録・申し送り・報告など伝達業務」「(9)電話対応・コンピューター入力・伝票や書類整理などの事務業務」が多いのも、患者の入れ替わりの激しさや重症化の影響と言えます。同時に、「(3)」「(9)」と「(5)会議・研修」は、看護の「効率化」として推奨されてきたものを多分に含むものです。この間すすめられてきた看護の「効率化」が、逆に看護業務を増やしているという皮肉な側面も指摘できるようです。

Z 医療事故関連

(1)ミスやニヤミス経験ある93.8%、特に多いのは注射と与薬で5割強
 「ミスやニヤミスを起こしたことがありますか?」では、「(1)ある」が93.8%を占め、「(2)ない」は6.2%に止まりました。患者のいのちをあずかる職場であってはならないことですが、ほとんどの看護婦が経験している実態です。この現実の上に立って、ミスやニヤミスが起きないシステムや、起きても医療事故につながらないチェック体制などを抜本的につくりあげることが必要です。
 「経験したミスやニヤミスで多いものはどれですか」(ミスやニヤミスを起こしたことがあると回答した人のみ、多いものから3つまで回答可)では、第1位から第3位の合計で、「(1)注射」57.5%、「(3)与薬」54.2%、「(16)看護婦間の報告・引継ぎ業務」28.1%、「(4)検査」15.2%、「(12)機器の操作」11.8%、「(2)診察・治療の介助」10.3%などとなっています。
 第1位だけで見ると、「(1)注射」40.2%、「(2)与薬」28.8%が他を引き離しています。
 病棟薬剤管理への薬剤師の配置や業務引継ぎのあり方・他職種との連携など、これら多いものへの集中した対策が必要です。

(2)事故が続発している原因は忙しさ85.0%
 「医療・看護事故が続発している原因は何だと思いますか?」(3つまで回答可)では、「(1)医療の現場の忙しさ」が特に多く、85.0%を占めました。続いて、「(2)交替制勤務による疲労の蓄積」41.5%、「(3)看護の知識や技術の未熟性」36.7%、「(11)慢性的人員不足」31.4%などとなっています。看護婦を大幅に増やして、安全でゆきとどいた医療・看護を実現できる体制を確保することが急務となっています。
 「次の看護体制が導入されたとすると、医療事故防止に対して、どのような影響がでると思いますか」では、「(1)3人以上・8日以内夜勤体制」が「(1)大変有効」33.2%、「(2)いくらか改善」44.4%、「(2)病棟の病床数の削減」が「(1)大変有効」24.0%、「(2)いくらか改善」58.9%と支持を集めました。
 逆に、「(3)16時間夜勤+休日増」「(4)12時間夜勤+休日増」は支持が少なく、休みへの要求は強かったにもかかわらず、長時間夜勤への拒否反応が強く出た形です。

(3)針刺しは最近2年間でも4人に1人が経験
 「この2年間で患者の血液が付着した注射針等を誤刺したことがありますか」では、「(1)ある」が4人に1人(23.2%)もあるという結果でした。
 「針刺し事故後の対応マニュアル」では、「(1)きちんとマニュアルどおりに対応している」が81.6%と8割強となりました。
 しかし、実際に誤刺した人のみに聞いた「誤刺した時、どう対応しましたか」(あると答えた人のみ)では、「(4)院内マニュアルに従って処置した」は58.4%に止まり、「(1)不安が残ったが忙しくてそのままにした」26.0%などという状況です。安全衛生管理の徹底が求められています。

[ 委員会・研修、新人教育

(1)委員会等がほとんど勤務時間外3割 時間外の手当全くなし6割
 「関わっている委員会・研究等の数」では、「1個」41.5%、「2個」22.9%、「0個」22.4%、「3個以上」13.2%でした。「1ヶ月間に参加する委員会・研修等の概数」では、「1回程度」46.1%、「0回程度」20.2%、「2回程度」18.7%、「3回程度以上」14.9%となっています。
 「委員会・研修等の参加が勤務時間外になる頻度」では、「(1)すべて時間内」は3分の1(33.2%)に止まり、「(4)ほとんど時間外」28.7%、「(2)時間外が3分の1程度」21.5%、「(3)時間外が2分の1程度」16.6%となっています。「勤務時間外で参加した場合の手当の支給」では、「(4)全く支払われていない」が6割近く(57.8%)にものぼり、「(1)すべて支払われている」は1割(10.2%)しかありませんでした。
 「委員会活動や研修が現場の看護にいかされていますか」では、「(2)まあまあいかされている」が7割(71.4%)を占めましたが、「(3)ほとんどいかされていない」が4分の1(23.4%)あり、「(1)多いにいかされている」は5.3%止まりでした。
 委員会・研修等をいかしていくためにも、勤務時間内に開催し、中身を吟味・精査していくことが必要です。労働条件の面でも、ただでさえ苛酷な勤務の中で、時間外をなくすとともに、時間外となった場合には手当を支給することが当然です。

(2)新人が自立できるまで教育が保障されているのは半数
 「新人がスタッフとして自立できるまで、十分な教育が保障されていますか」では、「(1)だいたいできている」は半数(49.8%)に止まり、「(2)あまりできていない」44.4%、「(3)全くできていない」5.8%となりました。
 「新人教育が十分できていない理由」(できていないと回答した人のみ、2つまで回答可)では、「(3)通常業務に精一杯で、教育の時間が保障されていない」63.7%、「(2)研修期間がきちんと取られておらず、業務に入っている」47.9%が多くなっています。続いて、「(4)初めての夜勤時に指導担当者がつかなかったり、十分な研修もしないうちに夜勤に入っている」21.2%、「(5)初めての器械操作や実践の時、具体的な指導体制がない」18.1%となっており、「(1)担当者がきちんと決められていない」も16.9%ありました。
 最近の看護教育は実習時間が減り、理論中心で実践訓練不足となっていますが、現場では人手不足で十分な指導体制もなく、即戦力として新人が働かざるを得ない状況となっています。
 「プリセプター等の病棟での新人教育は時間内にできていますか」では、「(2)だいたい時間内にできる」が6割(58.1%)となり、「(3)ほとんど時間外になる」は3分の1(33.9%)でした。ただし、「新人教育が十分できない理由」で「(6)時間外に指導しても超勤手当がつけられない」が12.0%あることなどから考えると、勤務時間内でできる範囲にいくぶん押さえ気味にされているものと思われます。

\ 心身の健康状態

(1)健康である3割、慢性疲労が8割
 「今の健康状態をどう思いますか」では、「(1)健康である」は3割(29.5%)に止まり、「(2)健康に不安」55.6%、「(3)大変不安」11.9%、「(4)病気がちで健康とはいえない」3.0%となっています。7割が健康に不安を抱いているという深刻な実態です。
 「疲れの回復について」では、「(3)疲れが翌日に残ることが多い」が54.7%と過半数を占め、「(4)休日でも回復せず、いつも疲れている」24.4%、「(2)疲れを感じるが、次の日までには回復している」20.2%となりました。「(1)べつに疲れを感じない」はわずかに0.8%でした。「(3)」「(4)」を合せた慢性疲労が8割(79.0%)にも達しています。
 平均年齢35.1歳、34歳以下が過半数という若い年齢構成から考えれば、異常な事態であり、看護労働の苛酷さを示していると言えます。

(2)自覚症状でも疲労感が顕著
 「ここ数週間で、次のうち該当する症状がありますか」(該当するものを全て選択)では、「(1)朝起きた時でも疲れを感じる」が81.9%と最も多く、続いて、「(2)仕事中にも疲れを感じる」78.0%となっており、疲労感が顕著に出ています。
 「(13)よく肩がこる」57.6%、「(12)目が疲れる」52.8%、「(9)全身がだるい」51.8%、「(7)気が滅入るような感じになることがある」51.0%が半数を越えており、「21いつもねむい」46.0%、「(11)腰が重い」45.0%、「(3)心配ごとがある」44.9%、「(10)首筋が張ってくる」43.4%、「25怒りっぽくなる」41.2%が4割台でした。
 慢性的な疲労感から、身体的な症状が出ているとともに、メンタル面でも影響が出てきていることがわかります。

(3)1年間に病気治療した人が6割強、病休20日以上2.9%・10日以上5.7%
 「(1)現在治療中または(2)最近1年間に医師にかかったことがあるものを、下記の病気分類から全て選んでください」では、「(1)現在治療中」が8,671人と3割(推計罹患率31.5%)、「(2)この1年間に医師にかかったことがある」が半数(13,438人、推計罹患率48.9%)となりました(該当がなかった人と無回答者の区別がつかないので、他の設問への回答状況から、無回答者1,241人・回答者数27,500人と仮定して、罹患率を推計しています)。また、「(1)現在治療中」か「(2)最近1年間に医師にかかったことがある」のどちらかに該当項目があった人は17,314人(推計罹患率63.0%)となっており、年齢構成からすると高めの数値です。
 病気分類別に見ると、「(1)現在治療中」と「(2)最近1年間に医師にかかったことがある」のどちらかに該当項目があったのは、「(13)風邪」24.0%、「(8)歯の病気」18.0%、「21腰痛症、頚肩腕障害、腱鞘炎などの運動器系の疾患」16.0%、「(7)耳、鼻、喉の病気」13.0%、「(19)皮膚の病気(水虫を含む)」11.0%、「(15)食道・胃・十二指腸、大腸などの病気」10.7%が、1割を越えています。
 「最近1年間に身体の具合が悪くて仕事を休んだ日数」では、「0日」は6割(58.2%)で、「0.5〜1日」14.0%、「1.5〜2日」9.1%などとなっており、平均2.6日でした。「10日以上」が5.7%(17.5人に1人)、「20日以上」2.9%(35人に1人)、「30日以上」1.9%(54人に1人)など、長い人が若干目立っています。
 なお、20日以上の病休者と年休消化との関係を見ると、年次有給休暇の長いところほど、20日以上病休者の割合が高くなっています。病気が年休消化の大きな理由になっていることがわかります。

(4)仕事やめたいが3分の2、本来やりがいあるが、忙しくて充実感低い
 今回の調査では、精神的な健康状態、燃え尽き状態(バーンアウト)などを調べるために、設問66「あなたは最近6ヶ月間に、次のようなことをどの程度経験しましたか」を設定し、「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感」(次頁の注を参照のこと)の状況を調べました(総合的な分析は最終報告でおこなう予定です)。

 「情緒的消耗感」では、「(7)1日の仕事が終わると、やっと終わったと感じること」が、「(1)いつもあった」43.7%、「(2)しばしばあった」27.9%で、あわせて71.5%となっており、仕事に追われている状況をあらわしています。
 「(1)こんな仕事もうやめたいと思うこと」「(8)出勤前、職場に出るのが嫌になって、家にいたいと思うこと」「(12)仕事のために、心のゆとりがなくなったと思うこと」「(16)身体も気持ちも疲れ果てたと思うこと」の他の項目でも、「(1)いつもあった」「(2)しばしばあった」をあわせると4割を越えており、「(3)時々あった」も加えると7割程度とかなり高くなっており、情緒的消耗感が大きいことが明らかです。
 「(1)こんな仕事もうやめたいと思うこと」については、「(5)なかった」は12.8%しかなく、「(1)いつもあった」「(2)しばしばあった」「(3)時々あった」を合せると67.6%と、3分の2が仕事を辞めたいと思っているという深刻な事態です。

 「脱人格化」では、「(5)なかった」が高い割合となったのが特徴です。「(3)こまごま気配りすることが面倒に感じること」で「(5)なかった」が8.1%に止まった以外は、「(14)今の仕事は、私にとって意味がないと思うこと」で58.8%、「(11)仕事の結果はどうでもよいと思うこと」で54.5%、「(10)同僚や患者と何も話したくなくなること」で41.9%、「(5)同僚や患者の顔を見るのも嫌になること」で41.1%、「(6)自分の仕事がつまらなく思えて仕方のないこと」で35.9%と、いずれも最も高くなっています。逆に、「(1)いつもあった」「(2)しばしばあった」は、低くなっています。
 専門職として、仕事に本来的にはやりがいを感じているということだと思われます。

 「個人的達成感」では、「(1)いつもあった」が、各項目で非常に低く、逆に「(5)なかった」が、かなり高くなっているのが特徴です。
 「(1)いつもあった」「(2)しばしばあった」をあわせても、「(4)この仕事は自分の性分にあっていると思うこと」で21.8%と2割を越えた以外は、1割強から1桁台と低率に止まっています。逆に、「(5)なかった」は、「(15)仕事が楽しくて、知らないうちに時間が過ぎること」で52.4%、「(2)我を忘れるほど仕事に熱中すること」で48.5%と、特に高くなっています。
 本来的なやりがいはあっても、忙しさの中で、実際の充実感はそれほど感じられないという状況です。

(5)辞めたい理由は忙しすぎるからが5割強、辞めたら看護婦をしないが4割
 仕事を辞めたいと思っている人のみに聞いた「やめたいと思う理由は何ですか」(3つまで回答可)では、「(4)仕事が忙しすぎるから」が5割を越え(56.3%)て最も高く、「(1)仕事の達成感がないから」32.5%、「(2)本来の看護ができないから」30.5%、「(5)夜勤がつらいから」25.7%、「(6)休暇が取れないから」22.6%と続いています。
 仕事に追われ、疲れ果てて、忙しさの中でやりがいや達成感も得にくい状況が、看護婦を退職に追い込んでいると言うことができます。
 同じく辞めたいと思っている人のみに聞いた「辞めた場合に、その後どうしようと思いますか」では、「(2)パートなど、もう少し勤務の軽い形で、病院・医療機関に勤務したい」が最も多く、25.8%を占めました。続いて、「(4)看護とは別の仕事につきたい」23.8%、「(1)今のような仕事で、別の病院・医療機関に勤務したい」20.0%、「(4)働かず、家庭にいたい」16.3%などとなっています。
 「(4)看護とは別の仕事につきたい」「(4)働かず、家庭にいたい」があわせて40.1%もあります。一度退職したら、4割が看護の仕事を離れるということであり、重大な結果です。専門職でありながら、忙しさに燃え尽きている状況を示すものです。
 「(2)パートなど、もう少し勤務の軽い形で、病院・医療機関に勤務したい」が最も多く、「(1)今のような仕事で、別の病院・医療機関に勤務したい」が2割に止まったことも、回答者のほとんどが正職員で、夜勤・交替制勤務をおこなっていることを考えると、重大な問題です。正職員で夜勤なども含めフルに働く再就職希望は低いということであり、看護婦の確保は、労働条件の改善による離職防止策が最大の方法だということです。

<注>バーンアウト
(1)情緒的消耗感
 情緒的消耗感というのは、自身の仕事によって疲れ果てたという感情であり、もう働くことができないという気分である。疲労感ではあるが、精神的な疲労を重視し、単純に身体が疲れ果てたということではなく、もう何もしたくなくなったという心理的な要素を多く含んでいる。
(2)脱人格化
 自分の世話やサービスを受ける人達に対する無情な、人間性を欠くような感情や行動のことである。この脱人格化には、無関心、拒否、敵意、遠慮などがあるとされているが、いずれも患者と距離を置く姿勢であり、なるべく接触しないような態度を発達させることである。消耗から身を守るために、患者との接触をほどほどにしたり、突き放したりするようになるという見方もできる。
(3)個人的達成感の後退
 個人的達成感とは、するべきことを成し遂げたいという気分であり、達成の充実感に浸る気分である。バーンアウトを経験している人ほど、この気分が実感できず、また、実感できそうもないと予期することで、なおさら達成感が後退することになる。疲れ果てて、患者に親身になれず、サービスに適切さを欠くようになれば、当然のことながら、成果は落ち込み、達成の気分は遠のくことにならざるを得ない。バーンアウトしたら、動機付けが乏しくなり、成果が落ち込み、達成感が後退するということになる。