診療報酬の2002年改定内容に関して

2002年2月20日
日本医労連調査政策局


(1) 中央社会保険医療協議会(中医協)は本日、診療報酬本体で史上初のマイナス1.3%、総体では2.7%にもおよぶマイナス改定を了承し、厚生労働大臣に即日答申しました。
 今回の改定は、@患者・国民と医療労働者が求める安全でゆきとどいた医療の提供に背を向け、A医療労働者の超過密労働を改善する人員増を見送るとともに、B国民的議論もほとんどないままに保険給付範囲の縮小(患者負担のさらなる拡大)を盛り込んだものであり、断じて容認できないものです。また、患者・国民に対する医療の中身以前に、財源問題からマイナス改定が早々に決定されたことは本末転倒と言わざるをえません。

(2) 史上初のマイナス改定によって、入院基本料など基本的な点数引き下げが強行されます。いま、医療の現場は、健康不安が7割、「仕事を辞めたいと思う」が3人に2人など、劣悪な労働条件に置かれています。すでに「人員削減で経費を削るしかない」などの声があがっていますが、今回の改定は医療労働者をいっそう過酷な労働に追いやり、患者・国民に対する安全な医療の提供そのものを脅かすものです。

(3) 今回の改定では、長期入院患者の保険給付範囲の縮小、大病院の再診など、従来の説明さえ覆す特定療養費の拡大(患者負担増)が盛り込まれました。いまでさえ深刻な受診抑制や長期入院患者の病院追い出しをいっそう進行させるものです。

(4) 効率化を名目に、いっそうの機能分化の推進、医療機関の淘汰・縮小が盛り込まれています。ねらいは一般病床の半減であり、診療報酬でこうした医療提供体制の縮小を押し付けることは止めるべきです。増員を伴わない平均在院日数の短縮も盛り込まれました。現場をいっそう過酷な労働実態に追い込み、完全な医療の提供を阻害するものです。

(5) 安全管理体制やじょく痩対策の不備が、診療報酬の減点項目とされるとともに、新たな義務付けが多く盛り込まれました。しかし、本当に医療の質を向上させるというのであれば、その行為に対する点数評価こそ必要です。医療事故をなくし、安全でゆきとどいた医療を実現するためには、安全確保のための人員や体制整備を診療報酬で経済的に保障することこそ求められています。

(6) 日本医労連は、今回の診療報酬改定にあたって、1対1看護の実現をはじめ安全な医療を保障する人員配置の実現を求めるとともに、患者・国民に適切な医療を提供するという診療報酬の本旨に立ち返った改定を求めて運動してきました。いま、健保本人3割負担など医療制度改革に対して国民的な反対の声と運動がひろがっています。医療関係者が、患者・国民との共同をいっそうひろげ、安全でゆきとどいた医療を実現するために運動を強化していくことが求められています。日本医労連は、そのために全力をあげて奮闘する決意です。
                          

以     上