【談話】

医師・看護師等の労働者派遣の原則解禁に断固反対し、撤回を求める
−労働者派遣事業の法律施行規則の一部を「改正」する政令案要綱について−


2003年2月28日
日本医療労働組合連合会(日本医労連)
                         中央執行委員長 田中千恵子
 厚生労働省の労働政策審議会・職業安定分科会民間労働力需給制度部会は、「職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案要綱」等について「厚生労働省案をおおむね妥当と認める」という報告を職業安定分科会に行った。「法律案要綱」では、病院、診療所、助産所等を除き、医師、看護師等の「労働者派遣」を原則解禁とする事とした。実施されれば、医師、看護師等の特別養護老人ホーム、訪問入浴、ディサービスなどへの派遣事業が可能となる。今回の「改正」は政令案要綱であるため、国会の審議がなくても閣議決定で「改正」でき、厚生労働省は公布を2003年3月末に予定している。

 医業への派遣については1999年の労働者派遣法「改正」で労働者派遣が原則自由化された後も「派遣になじまない業種」として禁止されていた。その理由は、「@医療は、専門職のチームにより提供されている。A適正な医療の提供のためには、十分な意思疎通の下に業務を遂行することが不可欠である。B派遣ではチームの構成員による互いの能力把握や意思疎通が十分なされなくなるおそれが強い。C医療は、適正に実施されるか否かが即人の身体生命に関わるものであり、業務の適正の確保については特に慎重に判断すべきものである」というものである。

 「改正」は「社会福祉法人等での業務化はチーム医療には当たらない」との見解により解禁としているが、その理由は明確に示されてはいない。今日、たびかさなる医療制度の改悪により、医療現場は入院日数の短縮や医療提供体制の減少が起きており、介護度の高い、医療を必要とする入所者が社会福祉施設等に増えている。医療との関連が密接な施設への派遣労働の導入は、入所者への医療サービス提供の水準の確保、医療の安全性や継続性にも重大な支障をきたすことも危惧する。

 今回の「改正」は政府財界の進める規制緩和からはじまっており、総合規制改革会議は「規制撤廃」を主張し続け、昨年は構造改革特区における特別措置として株式会社による特別養護老人ホームの設置及び経営が解禁されている。医師、看護師等の原則解禁は、医療分野への営利会社参入、派遣労働の全面解禁につながることはいうまでもない。さらに、人件費のコストダウン競争により、いっそう劣悪な条件におかれる医療労働者の拡大につながる。
日本医労連は、医療の営利化に反対し、安全で安心できる医療体制を確立する立場からも、「改正案」に断固反対し、撤回を求めるものである。
以   上