医療分野の一部派遣容認に強く抗議する
2003年 6月 19日
日本医療労働組合連合会


1、 昨日夜、厚生労働省医政局の「医療分野における規制改革に関する検討会(座長・宮武剛埼玉県立大学教授)」は、医療機関への医療資格者の労働者派遣について、「紹介予定派遣の場合には解禁しても差し支えない」とする報告書を取りまとめました。日本医労連は、この性急な決定に強く抗議するとともに、解禁阻止に全力をあげるものです。
1、 本報告書の問題点は第1に、安全な医療の推進、医療の質確保という点から見て、十分な議論が尽くされたとは言えないということです。労働者派遣制度が原則自由化された下でも、医療機関への医療資格者の派遣については、チーム医療を担保するという観点から引き続き禁止されてきたものです。本検討会の論議の中でも様々な危惧の念が示されましたが、その具体的な対策もないままに、労働者を事前に特定できるという理由だけで、安易に決定されたと言わざるを得ません。
1、 第2には、僻地・地方や中小病院などの医師、看護職等の不足解消への活用が指摘されましたが、実際にはその解消に役立つものではないという点です。医師、看護職等の充足のためには、養成強化や医局の弊害是正など、総合的なマンパワー対策こそ必要です。「ないよりまし」という議論だけでの解禁では、むしろ制度が悪用されて、安易な労働力確保が横行し、安全な医療確保が阻害されてしまうという強い危惧を持たざるを得ません。
1、 第3には、労働者保護という観点から見て、問題の多い論議だったということです。紹介予定派遣は、派遣期間終了後の直接雇用を予定(期待)したものですが、看護職等の産休代替への活用が議論されるなど、制度の十分な理解もないままの取りまとめとなっています。委員の質問を通して、特約で労働者の入れ替わりを制限すること(退職制限)や、新規採用すべてを紹介予定派遣で行い、気に入らなければ採用しないことなども可能なことが明らかになりました。こうしたことを許せば、医療従事者の雇用の不安定化と賃金・労働条件の切り下げがすすみ、チーム医療と質の高い医療従事者の確保にも大きな支障が生まれることは明らかです。
1、 第4には、民主的な手続きの点からも、大きな問題があるということです。雇用や労働条件等にかかわる厚労省の各審議会には、例外なく相当数の労働者代表が参加していますが、本検討会には労働者代表は1人も加わっておらず、労働行政に大きな汚点を残すものです。本国会で成立した労働者派遣法改正の前提となった「労働政策審議会」の建議(昨年12月)では、紹介予定派遣に事前面接等を認めた中でも、医療業の派遣は引き続き見送られました。にもかかわらず、法案成立前から検討会をつくってすすめたことは、「はじめに結論ありき」の極めて意図的なやり方です。
1、 本報告書の取りまとめは、総合規制改革会議等からの株式会社参入や混合診療導入等の圧力が強まる下で、極めて短期間で強行されました。検討会の今後の議題や日程も全く決まっていないことを見ても、医療従事者がスケープゴードとして差し出されたと見ざるを得ません。国民の命にかかわる問題を取引の道具とすることは、断じて許されるものではありません。派遣解禁の政令改正に至るまでには、労働政策審議会での再論議等が残されており、年末ないしは年明けまでかかるものと予想されます。派遣解禁は、安全な医療を阻害し、雇用の不安定化や労働条件の切り下げを招くものです。日本医労連は、医療機関への医療資格者の派遣の持つ問題点を徹底して明らかにし、解禁を阻止する決意です。
以上