看護師メッセージ(中間まとめ)
1176人の切実な思い 聴いてほしい、看護師たちの悲鳴を
2003年11月18日
日本医労連全国組合協議会

 いま看護の現場は、入院日数の短縮や医療の高度化のもとで、かつてないほど過酷な状況になっています。忙しい仕事に追いまくられ、本来の看護ができないことに悩み、看護師は疲れ果てています。健康破壊やバーンアウトがあとを絶たちません。そして、患者さんにも我慢を強い、十分な看護ができていない状況です。
 こうした中で、日本医労連全国組合協議会は、看護師の切実な思いを率直につづってもらい、世に問いかけていこうと、9月から「看護師のメッセージ運動」にとりくんできました。
 今回発表するのは、中間まとめであり、10月末までに集まってきた公的医療機関に働く看護師など1,176名分の概要です。
 どのメッセージにも、仕事に追われ苦しむ看護師の実態、人手が足りず、患者に十分な看護が提供できていない状況が綿々とつづられています。安全でゆきとどいた看護を実現するためにも、看護師不足の解消は待ったなしの課題です。

1、8割以上が、人手不足を訴えている

 仕事に追われ、疲れ果て、人手不足を訴える声が圧倒的でした。記述内容を整理した集計(後掲)でも、82.8%が「人員不足、増員の必要性」にふれているという結果です。そして、それは看護師をかつてないほどの過酷な勤務に追いやっているというだけでなく、患者への医療・看護にも大きな影を落としており、「満足な看護ができない」という現状への葛藤が綿々とつづられています。

事例132より
 二交代制が始まって看護師が心身共に疲れています。患者様に優しくなれません。笑顔の呼びかけは無理です。「良い看護サービスの向上を!」が、目標スローガンになっていますが、現実的に患者様の状態に比べ看護師不足で、患者様の満足する援助はできません。映画の“ああ、野麦峠”じゃないけど、昔の紡績女工よりひどい労働です。いつ、医療事故が起きてもおかしくないのです。現在、医療界の矛盾があり、医療事故が増加傾向です。“人にやさしく、ゆとりの看護”なんて、夢のまた夢です。

事例68より
 看護婦から看護師、何が変わったのか。変わったのは、忙しくてカロウ死が増えた事かなぁ。……私は何をやりたくて看護師になったのか。立ち止まって振り返り、考える事も出来ない忙しさ。50床で外来、内科、整形の混合病棟、手術患者をかかえて2人夜勤、準夜は出勤前に夕食、患者さん達はいつも待たされて、自分が何を頼まれたのかも分からなくなってきている。本当に2人夜勤の忙しさ、本当にこれでいいのだろうか? 看護師として患者さんに何をしなくちゃならないのか。「いま、看護師が13年前のナースウェーブを」と思うけれど、みんなと話す機会も持てない。昼休憩も細切れで、1日のスタッフが顔を合わせることもなく終わる。固定チームのため、病棟に2つの医療チームがあり、他チームの患者のことはわからない。これでは患者様がかわいそう……。自分の病院に両親を入院させたくない。看護師が足りなくて、きっとかわいそうだから。

事例11より 私たちの職場は、毎日病棟内を走り回って、仕事をこなさなくてはならない状態です。ナースステーションはいつも空っぽで、電話が鳴っても、ナースコールが鳴っても、でられない状態です。……患者さんの声もじっくりと聞いている時間がなく、イライラしていることが多いです。もっとゆとりのある看護がしたいです。夜勤も2人ではなく、患者さんの状態で、3人〜4人にしてほしいです。どうか、もっと看護師の人数を増やして欲しいです。疲れた顔をしてイライラして、気持ちに余裕のない看護師にケアされても、患者さんも喜ばないのではないでしょうか?

事例147より
 私は現在、重症心身障害児病棟に勤務しています。……自分である程度できる患児は、言えば「ほったらかし」の状態にあります。息つくヒマもなく走り回っている毎日で、心にゆとりを持つ間もありません。せめて心にゆとりを持ち、患児にもっと手をかけることができるような看護が実施できるよう、看護師を増やして下さい。患者が後回しになるような医療現場は、早急に改善してもらいたいと思っています。患児は、親のような接し方も求めていますが、日常の業務に追われ、幼い患児を抱っこしてあげることもできません。心の発達を援助することも、重障児看護にあっては大切なことです。是非、患児が満足を得られるような看護体制を確立していただきたいと思います。生命は誰も皆、平等であると思います。1人では動けない、生きていけない人たちにも生きる権利を保障し、安心して暮らせるようにしてください。

事例59より
 「起こして。起こして」と呼ぶ、かすれた小さな声。起こしてあげるが、1人では起きていられず、だっこしていてあげないと倒れてしまう。ベッドアップでは、起きている実感がないらしく、「起こして」と言い続ける。癌末期の患者さんは、体のおきどころがないのである。もっとそばにいて、思うとおりにしてあげたいと思っても、準夜勤の2人では時間が許すはずもなく、次の患者さん、次の処置へと行かなければならない。2日後の朝、この患者さんは亡くなった。死ぬ間際のささやかな望みでさえ、叶えてあげることができないくやしさ、腹立たしさ。「せめて、夜勤の看護師がもう1人いれば、もっと暖かい看護ができたのに」と、申し訳なさで、涙が止まらなかった……生まれるとき、死ぬとき、せめてその時ぐらい、ゆとりをもって、時間をかけて看護してあげたい。

事例45より
 患者様が入院してくると、最低12〜15枚の記録があります。入院診療計画書・患者記録・褥創対策に関する評価表・内服薬患者自己管理決定基準・転倒転落アセスメント・スニアシート・転倒と転落防止のための説明書・問題リスト作成・看護計画作成などなど、たくさんの記録です。このほかに、入院時オリエンテーションや、作成した看護計画を説明し、患者様に納得してもらいサインをもらうことなど、入院に伴って行うことが山ほどあります。政治家の方たちは、どういう病棟、病室に入院しますか? 普通の人たちよりずーっと大きな特別室に入院され、また、特別待遇を受けるのではないですか? 走り回っている私たち、そんな中でもミスを起こさず、患者様に満足してもらえる入院生活を送ってもらい、医師にも気を使い、神経をすり減らしての勤務を行い、家に帰ったらクタクタです。帰る道では「あれを作って食べよう」と思いますが、家に着くとフーッと安心し、「てんや物」になってしまい、家族には我慢をしてもらう生活というのが現実です。また、年休も思うように取れず、毎年捨てています。もっと人数を増やしてくれれば、私たちも体を休め、「さあーがんばるぞ」と思うのですが、疲れをためながらの仕事はもう限界です。看護師増やしてー! 医師も増やしてー!

事例53より
 産科病棟に勤務しています。夜勤は準夜・深夜どちらも2人で行っています。お産や入院が重なった時には、全く患者様のナースコールに応えることができません。例えば、1人が分娩室でお産の介助につき、もう1人は生まれたばかりの赤ちゃんの処置をしている時には、陣痛で苦しんでいる患者様の傍へ行って声をかけてあげることもできず、また、新生児室にいる昨日生まれたばかりの、呼吸がうまくできない赤ちゃんに付き添って、観察することもできないのです。……どの患者様にも安心で安全な入院生活を送って欲しいと思っているのに、現状では全くできません。看護師のいない新生児室で、赤ちゃんが泣いていても、泣いている赤ちゃんの声でお母様方が心を痛めて眠れなくとも、抱いてあげる余裕もないのです。このような体制では、質の良い看護ができるとは思えません。質の高い心のこもった温かい看護がしたいのです。看護師を増やしてください。(東京)


2、人員不足で、いつ事故がおきてもおかしくない

 医療事故の報道に胸をいため、自分も何時か同じような事故をおこすのではないかとおびえ、人員不足がその根底にあるという記載がいくつもありました。人手不足の下で、「事故が起きないのが不思議」というのが、看護師の実感です。

事例63より 近年、テレビや新聞などで医療ミスが大きく取り上げられているが、他人事ではなく、毎日、自分が起こしてもおかしくない状況下にある。日勤・深夜勤入り、準夜勤明け日勤など、疲れが取れない状態で集中力が欠け、忘れたり、ミスを犯しかねない。わが病棟は、慢性疾病の寝たきり患者さんが多く、日常的介護や痴呆患者さんの対応、呼吸器装着者の看護など、高度医療までおこなっている。さらに、心療内科の対応は慎重に言葉を選んだり、医療に対して厳しい目で見ている家族が多いため、疲労度が増している。肉体的疲労と精神的疲労が大きい。そのわりに待遇は悪く、社会的な地位も低い。

事例105より
 在院日数の短縮に伴って、その期間内に今までと同じサービスを行うには、看護師は少なすぎます。どうしても画一的になり、計画に追われ、個々の事例に対応しにくいのです。つまり、同じ時間内に行う仕事や処置が増えているということです。なんでもないことをミスしたり、大きな医療事故を起こしそうになる危険がいっぱいの職場になりつつあります。人を無視した仕事だけの職場になりつつあります。個々の技量に期待するには限界があります。早急に、制度として、看護師を増員していただきたいと思います。

事例4より
 医療事故を防止するために必要なことは、人員を増やすこと以外にはないと思います。どんなにすばらしいマニュアルを作っても、そのマニュアルどおりにやるためには、少人数ではできません。これでは、正面きって『医療事故をおこせ』と言っているのと同じです。だってマニュアルを守れないんですもの。患者が安全でゆきとどいた医療や看護を受ける権利があるなら、私たち看護師には、その義務がある、いえ権利がある。絶対に看護師を増やして下さい!! 患者は、寂しがっています。看護師は患者のところへいけない状況にあります。もっと患者の側で、患者の手を握り、訴えを聞き、一緒に笑ったり、泣いたりしたいです。……国がすすめる改革は、こんなひどい状態の日本を目標にしているのでしょうか? 政府は、病院や患者をどこに導こうとしているんですか? 私たち看護師に、もっと患者と接する時間をください!!

事例107より
 日常的に疲労感、ストレスのたまっている状態で勤務しています。1人の看護師がナースコールや電話の応対をしつつ、注射や与薬業務を行い、「ミスをおかしてはいけない」という緊張感がいつもあり、頭痛や肩こり、眼精疲労等、また、不眠症で悩んでいます。医療現場で、安心、安全、信頼される医療、看護のためにはマンパワー以外ありえません。IT化がすすんでも、それをチェックし、医療を直接患者さまに提供するのは、看護師自身です。高齢化社会、長寿社会が急速にすすむ中、高齢患者さまの対応には、より細やかに、ゆっくり時間をかけて接することが大切です。「時間をかけて接したい」と思っていても、今の過密業務、人員不足の中では、思うようにいきません。また、小児科病棟でも、細やかな観察や対応、投薬、点滴の管理などに神経を使います。マンパワーの不足を痛感する毎日です。


3、健康もむしばまれ、「やめたい」看護師が続出

 過酷な労働実態のもとで、心身ともに疲れ果て、健康を危惧する声が多く出されました。そして、ゆきとどいた看護もできない中で、やりがいを失い、やめたいと思っている声もかなり出されました。

事例96より
 病気になって、1ヶ月夜勤免除してもらいました。夜勤がないって、なんと素晴らしいことなのかと、実感しました。今日のことは今日のこと、明日のことは明日やればいい。どんなに疲れても、今夜から明日の朝まで寝ればいい。勤務を逆算して、今日寝とかなくっちゃと思うこともない。夜中に飛び起きて、勤務は何だっけと不安になることもない。夜が安心して眠れるということは、こんなに心と身体にいいということを強く感じました。私は学校を卒業して、看護師しかしたことがありません。だから、普通の生活(朝起きて、夜寝る)はした事がありませんでした。深夜の前には、寝とかなければ仕事が辛いと、思えば思うほど眠れず、今は睡眠薬に頼っています。準夜の翌日も勤務のことが多いのですが、眠るのにアルコールの力を借りています。7年前、虫垂炎の手術をしました。その日、早出勤務で腹痛があり、入浴介助のある日だったので忙しく、痛み止めを使って働き、その夜は深夜だったのですが、痛くて眠れず、50gボルタレン坐薬を使っても痛みが取れませんでした。それでも夜勤を休むことができず、働き、仕事を終了して即入院・手術となりました。医者から「なぜもっと早く来なかったのか」と、叱られました。

事例70より
 発熱や腰痛でつらいときでも、夜勤などは急に代われず、坐薬などを使用して業務につくことがある。人員不足のため、代わってもらえる人がいないのが現状だ。もちろん、家族の病気などのときも、休みをもらえることもなく、子供を1人で家に寝かせて、病院勤務をこなしている。看護師という職業でありながら、一番大切にしたい人のことをみることが許されないのは不思議なことだ。忙しさのあまり、人との関係も悪くなり、自分もつかれきって、今の職場を離れたいと考えている看護師多いと聞く。もっと看護師がたくさんいたら、患者様とのゆとりある接し方もでき、もっと違った面で援助もしていけるのではないかと思う時さえある。有休があっても取れず、3日連休も難しく、時間外を書くと無能な看護師とレッテルを貼られかねない日々の業務も、看護師の増員ですべて解決されていくのではないか? 忙しい業務であったとしても、自分をリフレッシュさせる時間、休暇は大切だと思う。

事例57より
 私たちは、「患者様のために、もっと深くかかわる看護を提供したい」と、常に思っています。しかし、看護師の人数に見合っていない業務の多さで、振り回されてしまい、私たちは業務をこなすのに精一杯で、患者様とゆっくりと話すことすら時計を見い見いという状況で、とても悲しいです。それでも、日常の業務を患者様中心にと考えていると、記録はすべて業務時間外になり、超勤は長くなるばかりで、2〜3時間は当たり前の状況で、半ばあきらめです。私たちの「良い看護の提供」をしたいという熱い思いも、業務の圧迫による体力や精神力の低下で消されてしまい、燃え尽き寸前です。その燃え尽きも、なんとか患者様の優しさで支えられているんです。これっておかしいのではないでしょうか。看護師の人数が増えることで、解消されると考えます。国はいつも最初に、公的病院に対して白刃の矢をたてますが、それは一番手っ取り早いからですよね。公的でも私的でも、看護師の仕事は変わりないんです。国は現状を知った上で、看護師を増やすための協力をして欲しいと思います。

事例79より
 毎月9回の夜勤をしています。夜勤のあとは体を休めるために休日が欲しいのに、続けて4日間夜勤をしなければいけません。疲労がたまっていて、個人の自由な時間であるはずの休みが、ただゴロゴロ寝ているだけで終わってしまいます。若い看護師たちも頑張って働いています。医療事故を起こさないように懸命に働いています。よりよい看護をするために、様々な委員会や学習会、研修がありますが、多くは勤務時間外でしています。夜勤あけで、眠らないで続けて会議に出席することすらあります。今の現場の人員では、そうせざるを得ないのです。新卒の看護師たちは、現場でつめこみのオリエンテーションもそこそこに、4月のうちから1人前と見なされて夜勤をし、1人で20名以上の患者さんを受け持っています。……短いサイクルで患者さんが入れ替わっていきますので、状況を把握するのに必死です。今のままでは身も心も疲れてしまい、あこがれて白衣を着て、この仕事についても、毎年多くの仲間が職場を去って行ってしまうのです。


4、二人夜勤では限界、患者の安全も守れない

 患者が高齢化、重症化しており、飛び回って仕事をこなしている中で、夜勤の人員を増やす必要性が語られました。特に、2人夜勤では限界であり、まともな患者対応ができないことが明らかになっています。

事例146より
 私の所属する職場は、皮膚科、泌尿器科、消化器内科、内科、神経内科、外科など、多くの科の患者様が入院されます。高齢化も進み、常に要注意の患者様が10人前後おられ、レスピレーターを装着している患者様も1名おられます。……主に月・水に手術があり、準夜勤に手術室から帰棟されることも多く、2人で夜勤をしていますが、1人が手術室に申し送りを聞きに行き、患者様の搬送にあたっている間は、1人で病棟をみていなければなりません。1人で30〜40人の患者様をみていますが、医療事故を起こさないように、常に対応に追われています。遅出の人が19時までいますが、夕食介助や下膳に追われ、到底、ベットサイドの看護に入る時間はありません。深夜帯も2人で40人前後の患者様を、事故を起こさないように、30分〜1時間毎に訪室し、処置を行い、小走りに走りながらみています。患者様からは、「どうして夜になると、看護師さんが少なくなるのか? 呼んできてくれるか? 何か自分の身に起こったら、どう対応してくれるんだ。不安でたまらない」と言われます。……看護師として本当に辛く、情けない思いをします。もちろん、休憩時間が取れないこともしばしばです。

事例133より
 病棟では、ナースコールにおわれ、勤務中の休憩や食事もできない時もあります。夜勤は2人のため、患者さんの食事時間になると戦争のようです。手術後の患者さんをみながら、痴呆のある患者さんが車いすから落ちたりしないようにしながら、複数の患者さんの食事介助、歯磨きなどに時間を要します。いつも勤務中に、この時間帯に患者さんの中の誰かが急変したら……。その急変に気づかなかったら……。そう思いながら、心の中では「もう1人、もう1人夜勤がいたら、3人で勤務ができたら……」。急変があった際は、1人がつきっきりで処置ができますし、他の患者さんにもゆっくり食事介助ができると思います。私たちはこのようにして、毎日の勤務をどうにかこなしています。

事例135より
 夜間、救急の入院があったり、手術患が帰ってきたりと重なれば、2人の看護師の夜勤ではとうてい行き届かない。ナースコールが鳴っていても、すぐには対応できない現状である。また、痴呆患者の入院ともなれば、2人の夜勤では目が行き届かず、危険行動が度々見られている。そのため、夜間、日中とわず、家族が付き添っている状態である。毎日続くとなると、家族の疲労も限界であろう。看護師の数が増えれば、ゆとりを持って患者さん1人1人と接することができるだろう。また、家族への負担も少なくなるだろうと思う。

事例130より
 安全対策、事故防止と言われているけど、現在の職場では2人夜勤(病床50)で、1人が交替で休憩に入る4時間は看護師1人での対応になる。転倒事故も後を絶たない。人数が増えないと、どうにもならない。ナースコールがなっても、すぐに行けない時がある。……食事介助を家族に依存している。しかし、実際、看護師2人、助手1人の準夜勤帯での夕食介助は、食事介助を必要とする患者さんの人数が多いとまわらないのが現実。完全にあてにしてしまっている。……忙しいと患者さんに笑顔で接する余裕がない。ゆとりのある看護がしたい。……結局、看護師が少ないことで、一番被害を受けているのは患者さん。私たちには言わなくても、「忙しそうでナースコールを押せない」という話をよく聞く。


5、延々とつづく時間外労働、手当も請求できない

 交替制勤務でありながら、数時間の時間外労働が当たり前となっています。しかし、時間外手当を請求できないという記述がかなりありました。業務量が大きく増大しており、仕事が終わらないというのが実態です。

事例7より
 とにかく忙しすぎて、時間内に仕事が終わらない。昼休みも短縮している。仕事が終わって家に帰ると、疲れすぎて何もする気にならない。婦長に言っても、「仕方ないのよ」で片付けられてしまう。スッタフが少ないのに、増やしてもらえないし、一体いつまで、この状態が続くのか。いつまで我慢すればいいのか、見通しが全くない。日勤が忙しい上に、スタッフが不足している状態なので、日勤をしてから深夜をしたり、日勤プラス延長したりすることも当たり前のように行われている。子供が体調不良でもなかなか休みづらい。婦長に言っても、「休みはあげられない」と言われた。いいかげんにしてほしい。

事例91より
 「患者中心の看護」と言われて久しいですが、言われなくても、看護師はいつも「患者中心」と考えています。しかし、現状では思うようになりません。脳外科病棟に勤務していますが、食事介助をしている人が5〜6人います。もちろん、配膳は全員です。誤嚥しないよう配慮しながら、食事介助を2人でしていくと、最後の患者さんの時は食事が冷めてしまっています。食事介助している間も、ナースコールはひっきりなしです。とても2人ではまわりきれません。……患者のニーズは高まっているにも関わらず、看護師は2人しかいないのです。……時間外労働は毎日、数時間に及びます。20時、21時になっても、日勤者は帰れません。それで深夜入りするのです。私たち看護師にも人間らしい生活ができるよう、看護師を増やして下さい。

事例50より
 日勤帯(8時30分〜17時15分)では、昼休憩も満足にとれないような、1分1秒を争うような忙しさが朝8時からずっと続き、夜は9時〜10時まで残業して、また次の日から同じような忙しい毎日が続いている。精神的にも肉体的にも疲労が極限状態で、余裕がないため、仕事中はピリピリと怒りやすく、患者さんへの看護をしているというよりは、業務をこなすのみになっている。家に帰れば、疲れすぎて食事を作る体力もなく、食欲さえない時もある。風呂に入って、短い睡眠を取れば、また仕事へ出かけていく。夜勤帯という時間に働くだけでも大変なのに、時には日勤帯以上の忙しさ、ほとんどは座る余裕もない忙しさだ。今までにない残業の多さ。準夜勤務(16時から24時)では朝5時過ぎとか、深夜勤務(0時〜8時)で日勤の昼休みの時間まで残業など、このような生活が続けば、必ず看護師の中から病人が出るだろうと、本気で思う。看護の仕事がしたいのに、できない状態である。

事例97より
 看護の質の向上、質の高い看護サービスの提供などが求められている中、少ない看護スタッフで日々業務に追われ、業務をこなしていくことだけで精一杯の毎日です。また、ニュースや新聞では毎日のように医療事故の報道を聞かされ、院内でも事故防止対策などにとりくみ、マニュアル作成や記録の徹底など、しないといけないことがドンドン増え、日々、強い緊張感と恐怖とプレッシャーで、身も心もボロボロです。ふと鏡を見ると、やつれた自分がいて、何のために看護師になったのかと、考えさせられます。自分の看護観とは全くかけはなれています。時間外労働、サービス残業も多く、朝1時間前に来るのは当たり前で、残業も当たり前。休憩もままならず、お弁当をただ流し込むだけ。休日も出てきて、係の仕事や話し合いに追われ、家庭との両立も難しいです。ただ、今は、自分のなりたかった看護師の夢にすがって、ひたすら頑張る日々です。

事例149より
 混合病棟で働いています。入退院が激しく、病院内で一番忙しい病棟だと思いますが、スタッフが師長含め19名(うち助手2名)で、年休も院内最低で年5日です。サービス労働も多く、病相、看護研究、チーム会、勉強会はすべて時間外です。15時に、師長より残業をするかどうかの声かけはありますが、「残業なし」と返事しても、急なことで残業した場合はサービス労働になります。医療事故にピリピリしているのか、現場の声より、上で考えた方法で行うため、仕事が繁雑になっているように思います(上は、現場の声より、自分がこうしたのだという実績を残すためにやらしているように思う)。

事例114より
 忙しい病棟などでは、超勤が毎日3時間前後は当たり前、他の職場でもあります。しかし、超勤をしたというお金をもらったことは、2〜3年全くありません。他の病院では、月4時間ということですが、師長に申請しても、「お願いだから、そういう事は言わないでちょうだい」ということで、全く相手になりません。精神科病棟では、時々離院患者が出ますが、そんな時は夜勤の人を含め、オフの人をすべて師長命令で呼び出しますが、「病棟の一大事なんだから、もちろんボランティアです」と言われます。でも、その際には、病気をしても休めないくらい大変です。休憩時間も40分〜45分くらいです。長期病休の補充も、来なくて当たり前がまかり通っています。就学前児童を持つ看護師が夜勤免除を申請しても、「子守さんを雇いなさい」などと、時代錯誤のことを言われ、優しさのかけらもありません。少子化に向け、若いお母さん看護師を応援し、働きやすい職場をつくりたいものです。外来は、師長、副師長を除き、ほとんどパート、賃金職員で、3ヶ月毎に各科ローテーションしています。「だれが休んでも、すぐ対応できるように」とのことだそうです。長年通院されている患者さんは、「声かけにくい。いつもの人がいなくて、何か聞いたり頼んだりしても、すぐ返事が返ってこない」と言われます。患者サービス向上という目標は後退しています。


6、研修・委員会で、プライベートな時間までつぶされ

 時間外や休日にも、委員会や研修などが入り、夜勤で疲れた体でありながら、休みもつぶれている実態がいくつも多く語られました。

事例140より
 私は看護師ではありませんが、同じ医療の現場で働くものとして、現在の看護師の仕事を見て感じることは、まず第一に、人手不足です。1人で何人もの患者さんを担当し、重症者であっても1対1ではありません。このような状況では、看護する者は緊張や不安、疲労やストレスを感じると思います。しかし、看護される患者さんも同じことを感じていると思います。気持ちのよい医療を行ってはじめて、患者さんにも満足してもらえるのではないでしょうか。現状の看護師の人数では、それが難しいと思います。そして第二に、この煩雑な毎日の仕事にもかかわらず、記録、検査業務の多さ、また、いくつもの委員会を兼務して会議に出る、やっと仕事が終わっても連日のように勉強会や研修会がある、これでは体がいくつあっても足りなくなります。家族と過ごす時間はあるのでしょうか? みなさん!! ここで「本当の医療とは何か?」、考えてみてください。

事例25より
 休日、深夜明けにもかかわらず、ブロック会議、勉強会に出席しなくてはならない状態で、ゆっくりと休む時間がない。研修・院内発表回答などの出席も、日勤であれば本人の確認なく出席となっていることがある。時間外も本当に忙しく、食事も取れない状態で、朝方になってやっと帰れる状態のある時もあるが、時間外を120分以上書くと、師長からなぜと言われる。仕事をしている間に記録をしていくように言われるが、実際にはむずかしく、仕事の中で後に回せるものといったら記録しかない。なるべく夜間勤務者(次の勤務者)に負担が少なくなるように、ケア等を含めてしていくと、そうならざるを得ない状態である。……年休は20日あるが、1年で20日使うことはなく、次年度になっても使いきれず捨てる形になっている。私たち看護師が忙しくばたばたしていると、患者さんが「大変ね」と気を使って、我慢してしまっていることもあり、申し訳なく思ってしまうことがある。

事例155より
 事故防止のため、各個人が委員会役員となり、がんばっている状況ですが、時間内、時間外問わず、プライベートまで仕事に染められている状況です。1人あたりの役割が減れば、みんながプライベートを充実させ、仕事に対する情熱が向上すると思います。今の状況では、精神的にもギリギリで、いつミスが起こるかわかりません。看護師という職業に疲れています。私のように思う人がどんどん増えていけば、看護師の人数はもっと減少し、病院の機能は維持できるのでしょうか?


7、子育て看護師たちはいっそう深刻

 夜勤、交替制勤務のために、家族の負担も大きなものがあります。特に、子供を持つ看護師はつらい状況を訴えています。

事例143より
 私には4人のかわいい子供たちがいます。2人は小学生、下の2人は保育園です。三交替勤務のため、我が家の生活は、どうしても私の勤務状態に合わせざるをえません。日勤で定刻に中々帰れず、そのしわ寄せが子供たちにいっています。保育園でも、いつも居残り組みの迎えのため、なかなか担当の先生と話しをすることもできません。おなかがすくため、迎えに行くといつも、「お母さん、おなかがすいた。早くご飯作って」とせかされます。迎えが20時過ぎてしまうと、子供たちは、車の中で眠ってしまいます。ご飯も食べずに。土・日、日勤のために朝準備をしていると、「お母さん、今日も仕事? 私たちはまた留守番だね」と残念がります。なかなか家族でのお出かけもできず、また、学校行事の参加も全部はできません。1日中、1年中、時間にゆとりがなく、朝から晩まで働いているのが現状です。もう少し人手が増えたら、時間外労働がなくなり、心にゆとりができます。毎日のように医療事故が報道されている中、「なぜ、こんなにミスが?……」と思う一方、他人事ではないなと、日々、気をはりつめて仕事をしています。第2、第3の医療事故が起きないように、ゆとりある仕事をするために、看護師を増やしてほしいと切に希望します。

事例64より
 子供口ぐせ…「お母さん今日なに番。何時に帰ってくるの! 一緒にお風呂入れる? 一緒に寝れる? 明日はなに番!」と、毎日聞かれます。夕食の時間が遅くなれば寝る時間も遅くなり、疲れてご飯を食べずに寝てしまうこともあり、夜中に「お腹すいた」と目覚め、ご飯を食べることも。私だけではなく、家族の負担、ストレスがとてもつらいです。


8、患者からも、看護師ふやしての声

 入院体験をもつ患者からは、看護師の激務を気遣い、安心して療養できるように、看護師を増やしてほしいという切実な声が寄せられています。

事例80より
 夫は膵臓癌で、56歳で他界しました。……入院期間はわずかでしたが、その時の看護に不満を抱きました。忙しさのあまり、かかわりが少なく、痛み止めの注射の管理だけで、訴えなければ放っておかれ、淋しかったです。「もっと夫を大切にして、もっと精神的な援助や生活の援助をして」と、叫びたい思いでした。自分も看護師として働いてきましたが、患者、家族の立場に立った時、看護に対する不満は多く、もっと看護師を増やしてと、大声で訴えます。

事例166より
 きのう準夜だった人が、今朝もう仕事をしている。いったい、いつ眠るのだろう。もっと人を増やして、休ませたいものだ。見ている患者もしんどいし、間違いを起こさないかと心配である。ある日、2本あるはずの点滴が1本になった。昨日、看護師が「すいません、あと1本残っていました」と謝った。謝ってすむことではないが、それも忙しく働いている看護師には仕方がないことなのだろうか。しかし、命にかかわるものである。忘れていたではすまされない場合もある。

事例164より
 私が検査入院したときに、看護師さんがいかに激務か、思い知らされました。夜中までお仕事しているのに、朝また働いているのを見て、本当に大変だなあと思います。ベッドで排尿しなければならないときは、特に気づかいました。来てほしいのですが、申し訳ないような気になり、ナースコールを躊躇してしまうのです。……安心して療養できるように、看護師さんに遠慮なく質問したりしたいです。そのためには、もっと看護師がたくさんいるといいと思います。ぜひ人を増やして、私たち国民が、医療に安心してかかれるようにしてください。


まとめにかえて

 看護師のメッセージの特徴を簡単にまとめてみると、第1には、看護師が仕事に追いまくられ、心身ともに疲れ果てているということです。そして、健康もおびやかされ、バーンアウトが広がっています。入院日数の短縮や医療の高度化の下で、看護師の労働は、かつてないほど過酷になっているのです。
 第2には、患者の受ける医療にも、深刻な影響が現れているということです。満足な人手がない下で、医療事故と隣り合わせの深刻な事態が広がっています。多くの看護師が、自らが大変ということ以上に、患者に行き届いた医療・看護が提供できていないことを切々と訴えています。人手があったら、もっと患者に接して、必要な看護ができるのにと、悶々としているのです。
 第3には、大幅増員の必要性が、如実に証明されたということです。入院日数の短縮や医療の高度化が急速に進行し、同時に医療事故防止・安全推進対策がすすめられる下で、看護師の仕事量は急速に増大しています。しかし、人員抑制策が徹底され、増員がストップしている下で、深刻な事態となっているのです。諸外国に比べ、極端に少ない日本の看護体制の抜本改善、看護師の大幅増員が切実な課題です。診療報酬の改善で、配置基準を増やし、人員配置の保障をおこなうことが、不可欠の課題です。
 第4には、まともな労働条件も保障されていないということです。少なくとも3人以上夜勤にすることなど夜間の人員体制の拡充や、交替制勤務でありながら常態化する時間外労働の抜本改善、委員会・研修などで満足に休日も取れない事態の一掃など、夜勤・交替制勤務に伴う負担を軽減し、看護師が働き続けられる労働条件へと改善することが必要です。
 私たちは、看護師と患者の置かれた過酷な実態を改善し、安全でゆきとどいた医療・看護を実現するために、いっそう運動を強化していきます。
以上