退勤時間調査・サンプル集計結果
2004年12月27日
日本医療労働組合連合会

(1) 約2万名分を集約
 日本医労連はこの秋、不払い時間外労働の一掃と時間外労働縮減、増員のとりくみをすすめる一環として、全国で「退勤時間調査」にとりくんできました。
 調査結果は各組合で集計し、経営者との交渉等に活用していますが、日本医労連としても、一定の組合から調査データを回収し、サンプル的に集計をおこないました。12月23日までに、93組合20,764名のデータを集積しました。

(2) 仕事に追われ、平均で75分を超える時間外労働
 集計結果の特徴は第1に、その大半が夜勤・交替制労働者でありながら、平均でも75分を超える恒常的な時間外労働を強いられているということです。始業開始前の時間外労働(前残業時間)が平均16.6分、終業時間後の時間外労働(残業時間)が平均50.3分などとなっています。特に残業時間は、60分以上36.7%、120分以上14.2%にも達しています。業務に追われ、仕事が終わらない実態があらためて浮き彫りになりました。

(3)不払い時間外労働が横行  平均で年45万円、病院総額7千5百億円
 第2の特徴は、時間外労働の賃金がきちんと払われているのが、3分の1(33.3%)に止まったことです。不払い時間外労働(いわゆるサービス残業)は社会的にも問題となり、是正が迫られていますが、依然として横行しているのであり、いっそうの対策強化が必要です。
 各種統計資料も参考に、このサンプル集計結果から不払い分の賃金を推計すると、1人当たり年間45万円程度、病院では年間総額7千5百億円程度という巨額になります。これを全額増員に回せば、13万人程度の増員が可能です。

(4)特に看護職と青年層で時間外労働が多い
 第3の特徴は、特に看護職と青年層で時間外労働が多いということです。残業時間についてみると、看護職では平均55.0分、60分以上が4割(41.1%)になっています。さらに24歳以下では、60分以上が半数近く(47.4%)にも達し、平均は60分を超えました(61.0分)。

(5) 安全のためにも、増員が緊急課題
 医療・福祉労働者を大幅に増やし、不払い時間外労働の一掃・時間外労働の縮減をはじめ、労働条件を改善して、生きがい・やりがいをもって働き続けられる体制を整備することが緊急課題です。それは、安全な医療・看護・介護の実現のためにも不可欠の課題です。


不払い時間外労働の賃金試算(病院分)

1、職員1人あたりの不払い賃金(年額)の推計額

(1)前提条件
 [1] 1日の時間外労働の平均時間
  退勤時間調査の結果から、75分として積算する(低めに見積もる)
 [2] 割増賃金の算定について
  30分以上についてのみ、25%割増とする(低めの見積もりとなる)
 [3] 年間の労働日
  245日と推定(各種統計から年間休日110日、取得有給休暇10日として)
 [4] 時間外手当の既支給分
  各種統計から1ヶ月につき7時間と推計し、4時間は25%割増と推計する
 [5] 医療労働者の時給の平均
  1,770円(賃金センサスより)

(2)1人当たりの年額の計算
 [1] 時間外労働分賃金の年額推計
  (1,770×30/60+1,770×1.25×45/60)×245 = 623,372円
 [2] 既基支給分の推計
  (1,770×3+1,770×1.25×4)×12 = 169,920円
 [3] 不払い賃金(年額)の推定額
  623,372−169,920 = 453,452円
1人当たり年間・45万円程度

2、病院における不払い賃金総額(年間)の推計

(1)前提条件
 [1] 1人当たりの年額 上記のとおり
 [2] 病院の職員数
  約165万5千人(病院報告より)

(2)不払い賃金総額の推計値
  453,452万円×165万5千人 = 7504億6306万円
病院年間総額・7千5百億円程度

☆もし、この分を雇用に回すと、13万人程度の増員が可能