滋賀発 野洲病院労働組合の仲間
職員みんなの思いを一つに

 昨年7月、滋賀県に新しい労働組合が結成されました。「これまで全く労働組合とは縁もゆかりもなかった」と話す病院職員が、一から組合運動に奔走しています。この半年間の奮闘を振り返り、舞台裏を執行部三役に伺います。


全員に伝えたい
 結成以来この半年間、組合三役として心をくだいている点について、塩見さん(書記長・看護主任)は「職場(手術室)から執行委員に選ばれているので‥」と、自らが執行部のまとめ役として「運動をどう進めたらいいのかと模索しながら、140数名の組合員全員に(職員数約290名)、方針を伝えることの大変さに日々悩んでいる」と語ります。今、執行部は18名で毎週定期的に執行委員会の開催と、「組合ニュース」の発行に努力していると語ります。執行委員長自らが「ニュース」の担当をし、組合の活動を組合員に伝えるうえでの大きな役割を担っています。

もう辞めるしかない
 看護師で病棟課長(師長)の大林さん(執行委員長)は「これまで何年か過酷な職場状況の改善を病院に訴えてきた」が、職場の改善が一向に図られず、中堅看護師の退職が相次ぎました。「このままなら、私たち(課長)何の役目もないのでは?」と、一時は病棟主任と一緒に退職まで考えたそうです。そんな時、これまで全く関心のなかった“労働組合の結成”という話に「こういう方法もあるのか」「どうせ退職届を出すのなら」と立ち上げに至った経過を振り返ります。

安全は個人まかせか
 組合結成時の職員への組合加入の呼びかけに‐(1)“医療の質の向上と安全の保障”を実現する、(2)職員の連帯を大切に、地域医療・福祉の向上に貢献する、(3)地域の患者さんのために笑顔で働き続けられる職場をつくる‐と、3本柱の目的が掲げられています。この点について尋ねると「スタッフ自身、いつか自分が医療ミスや事故をやってしまうのではとの不安を常に抱えながら毎日仕事をしている。これまで大きな事が起こらなかったことが不思議なくらい」「起こらなかった現実をどう捉えているのか病院に聞いても、一人ひとりの努力は何の評価もされない」「自分の体が本当にどうにかなるのではという、過酷な勤務時期もあった」と話します。こうした“やって当たり前”という病院の態度に、怒りを通り越し、無力感を感じた職員も少なくなかったのではないでしょうか。

みんなが同じ思い
 今後の課題として大林さんは「結成当初は、組合を作れば問題がすぐに解決すると思っていたが、労働条件面での改善が一向に進まず、今はそのギャップが大きい」と話します。「しかし、140名もの人が集まったのも、みんなが同じ視点で考えてくれていたから」「どうにかして欲しいという人が(組合に)加入してくれた」と語り、職員一人ひとりの医療と職場を支える強い思いを感じます。
 また、日本医労連への切実な要望として「組合結成後の執行委員への学習や、具体的問題への対処などアフターケアにもっと力を入れてほしい」と語ります。
 最後に塩見さんは「勢いで作った組合ですが、今が一から勉強していかないといけない時期。みんなで組合を盛り上げていかないと」と決意を語り、伊藤さん(看護師・執行委員)は「執行委員がもっと知識を身に付け、組合員や職員に“組合ってええもんや”と働きかけられる存在になれれば‥」と語ります。

組合員の要求が“命”
 組合員の誰もが参加できる活動として、月2回(土曜)のレクリェーションに力を入れています。組合員はもちろん、家族参加もOK、未加入の職員も組合費を払えば参加できる形で、職員間の交流を目的に取り組んでいます。また組合員から寄せられた「わたしの要求」の実現にむけ、一番多かった“人員確保(増員)”の問題で、病院に「直接、職員の声を聞き、現場の状況を見に来るよう」要求し、交渉していると話します。
 今、病院は救急外来へ変則労働制を導入しようとしていますが、「現状とどうかわるのかが組合員に十分に伝わっておらず、そこを理解したうえで(病院と)交渉して行こうと思う」と、大林さんは語ります。
 他にも看護助手の「早出勤務時間の変更」に対する「アンケート」の実施など、息つく暇もない半年間の組合活動は、既存の組合にも決して引けを取らないことと、組合三役の「組合運動への姿勢」に注目すると同時に、「組合員の要求に根ざした運動とは何か」を、改めて考えさせられる、新年への決意に満ちたみなさんの奮闘振りでした。